第324夜 ページ41
セドリックと別れた後、僕は当初の予定通りスネイプ先生の研究室へと足を運んだ
先日貰えなかった薬を処方してもらうためだ
あの日は結局夜が開けるまで拷問は続いたので、薬どころの話じゃなかったのだ
拷問を終えるのがあと三分遅かったらあの女の首を締めているところだった
あいつはちゃんと気付いているだろうか
自分が運良く命拾いしたことを
『スネイプ先生、いる？』
「何の用だ」
薄暗い地下牢に足を踏み入れると、昼休みで閑散とした教室で一人、先生が薬品を整理していた
先生は僕に気付くと思い切り眉を寄せる
「何故この間はここに来なかった」
『色々と事情があったんだ』
約束していた日に僕が薬を貰いに来なかったことを案の定先生は責めた
けれどあの夜の真実は語らない。語る気はない
あんな屈辱、誰が好んで語るものか
ぼくの中の濁ったものがドロリと溢れる
「……まぁいい。持っていけ」
『どうも』
探るような視線を避け、差し出された瓶を二つ受け取る
一つは聖水、もう一つは鎮静剤だ
受け取ると同時に蓋を開けて僕は一気に喉に流し込んだ
イヤイヤ期が来る前に飲まないと面倒だから
『……はぁ、まっず』
飲み終えた瓶を雑にスネイプ先生へと返す
それから一旦息を整えるために椅子に座って机に突っ伏した
「そういえば、我輩の研究室を荒らしたのは君かね？あのよく分からん花も一緒に消えていたから、犯人は君以外考えられんのだがね」
『……別に荒らしたつもりはないんだけど…』
あの時は必死だったから、もしかしたら無自覚に部屋を散らかしていたのかもしれない
「それで、あの花の効能は」
『それは完成したら教えるって言ったじゃん』
あまり喋る気力もなくて雑に会話を断ち切る
しばらくすると頭上からスネイプ先生の大きなため息が聞こえた
突っ伏したまま僕は目を閉じる
途端に僕を襲うのは少し勢いが失せた闇の波
何度も呼ばれる名前
徐々に惹かれるように僕はそちらへ足を向ける
自覚しつつもそれを止められない自分が一番の恐怖だった
だってあっちは心地良い
堕ちてしまえば楽になれる
理性などかなぐり捨ててしまえばどれほど楽か
「これでも飲むといい」
なのに皆「闘え」と言う
僕の苦しみも知らない癖に、無責任に闘えと、そう宣うのだ
『いらないよ、ンなもん』
無性に苛立って、僕は差し出されたカップを叩き落とす
パリンッ
無機質な音が地下牢に響き渡った
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雪乃 - 面白すぎて一気に読んでしまいました…！！話の展開にとてもワクワクしてます！！更新応援してます！ (2021年12月17日 0時) (
レス) id: c79f44231f (このIDを非表示/違反報告)
ﾆﾉｺｺ(プロフ) - アロンさん» ありがとうございます…(T_T) 更新頑張ります！！ (2021年12月15日 4時) (レス) id: c7287fd7d7 (このIDを非表示/違反報告)
ﾆﾉｺｺ(プロフ) - 卵のたまごさん» ありがとおぉおおおぉおお！！！！ (2021年12月15日 4時) (レス) id: c7287fd7d7 (このIDを非表示/違反報告)
アロン(プロフ) - めちゃくちゃおもしろいです！！更新待ってます！頑張ってください！ (2021年12月12日 19時) (レス) id: ed0e3e5242 (このIDを非表示/違反報告)
卵のたまご(プロフ) - 好きだぁぁぁぁぁぁぁ…！！！ (2021年12月7日 22時) (レス) id: d5144cc3f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2021年9月12日 16時
