第305夜 ページ22
ウィーズリーおじさん達に挨拶をして、僕はブラックさんに見つからないようこっそり部屋へ戻った
「…A」
あと一段で僕のテリトリー
そこまで来た時、下の方から声が掛かって僕は顔だけ緩慢に振り返った
『…こんばんは、ジニー。こんな夜更けにどうしたんだい』
途中から彼女が着いて来ていたのは分かっていた
だから声をかけられても驚きはしなかったが、ただその意図は分からず首を傾げる
「…体調はどう？」
踊り場から見上げてくるジニーを見下ろす
僕は暫し間を置いて口を開いた
『お気遣いありがとう。僕なら大丈夫だよ』
当たり障りのない言葉
それだけ告げて部屋に戻ろうとするのを、ジニーがまたしても止めてきた
「…無理してるのね」
辛そうな顔してる
そう続けた彼女
それに僕は息を吐いて、もう一度顔だけ彼女に向けて口を開いた
『＿＿＿だったら、何？』
ツラい。もちろん、無理してるさ
今だって薬で落ち着いていると言えど、ちょっとでも理性を手放せば彼女に怪我の3つ4つ負わせるのは目に見えてる
『無理しなくていいならそうしようか？』
冗談めかしてそう笑う
ただの戯言だ
闇に意識を任せることなんて決してしない。僕の良心が健在のうちは
「それは困るけど…」
少し怖気付いたように首を振るジニー
だけど、再度合わせられた瞳は離れても分かるほどに瑞々しく、光があった
「暗い顔、しないで」
告げられたのはなんて事ない、ありきたりな台詞
「きっと前みたいに戻れるわ」
そう信じて疑わない瞳に問い掛けた
『どうしてそう思う？ 魔力汚染はそんな簡単な問題じゃないよ』
夢見るだけじゃ理想は掴めない
度が過ぎた希望的観測はただの現実逃避と変わらない
僕の直面している現実は、そう簡単に乗り越えられるものではないのだ
「貴方だから」
しかし、臆することなく放たれたのはそんな言葉
彼女の答えに僕はぱち、と一度瞬きをすると首を傾げた
「だってAが負けるはずないじゃない」
当たり前だと笑う彼女に僕は思わず口をぽかんと開けた
「A･ヘルエレガルは自由の象徴だもの
何かに囚われるのは貴方らしくないし、必ずAなら道を見つけるでしょう？」
だから信じてる
そんな真っ直ぐな言葉にグッと眉を寄せた
『…君の知る僕は、もう居ないよ』
だから期待しないでくれと、僕は逃げるように階段を上るのであった
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雪乃 - 面白すぎて一気に読んでしまいました…！！話の展開にとてもワクワクしてます！！更新応援してます！ (2021年12月17日 0時) (
レス) id: c79f44231f (このIDを非表示/違反報告)
ﾆﾉｺｺ(プロフ) - アロンさん» ありがとうございます…(T_T) 更新頑張ります！！ (2021年12月15日 4時) (レス) id: c7287fd7d7 (このIDを非表示/違反報告)
ﾆﾉｺｺ(プロフ) - 卵のたまごさん» ありがとおぉおおおぉおお！！！！ (2021年12月15日 4時) (レス) id: c7287fd7d7 (このIDを非表示/違反報告)
アロン(プロフ) - めちゃくちゃおもしろいです！！更新待ってます！頑張ってください！ (2021年12月12日 19時) (レス) id: ed0e3e5242 (このIDを非表示/違反報告)
卵のたまご(プロフ) - 好きだぁぁぁぁぁぁぁ…！！！ (2021年12月7日 22時) (レス) id: d5144cc3f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2021年9月12日 16時
