第188夜 ページ46
キングズ･クロス駅は帰省する生徒と迎えに来た保護者達でごった返していた
それをコンパートメントの車窓から静かに眺める
降りるまで僕と一緒に居たがったドラコは先に行かせた
優しい所がある彼に、こんな日にまでやきもきさせたくはなかったのだ
『ふぅ…』
一人きりの車内で気持ちを落ち着かせるように息を吐いた
もう逃げはしない
ちゃんと両親の待つ家へと帰る
だけどやっぱり緊張はしてしまうものだ
なんせ別れ方が悪かった
『よし』
意を決して席を立つ
身一つで家出したので荷物は無く、手ぶらだった
手汗の滲んだ掌をぎゅっと握り締める
トン
トン
出入り口の階段を一段一段、ゆっくりと降りていく
最後まで汽車に残っていたのは僕なので後ろから急かす者はいない
それが逆に緊張を煽った
駅のプラットフォームに足をつける
騒がしかった構内が固唾を呑んで道を開けた
『……』
「A…」
開いた道の先には、黒衣のマントに身を包んだ父様と、涙を堪えながら口元を手で覆う母様がいる
……少し、痩せただろうか
コツコツと靴を鳴らして二人に近付く
あと一歩で届く距離に立ち止まった
「A……」
「っ……っ…！」
名前を呼ぶ父様と、感極まってポロポロと涙を零す母様
やはり二人とも、家を出る前より痩せていた
たくさん、心配をかけてしまった
もういいだろう、自分
この人達をこれ以上苦しめていい訳が無い
『……ただいま』
雑音に掻き消されそうな程小さな声
それでも
「…おかえり、A」
「おかえりなさいっ、Aちゃん…！」
二人にはちゃんと届いていた
父様の頬は分かりにくく緩み、母様の涙腺は決壊する
＿＿＿＿帰ったら、一番にパパにハグしてあげるのよ？
母様の手紙を思い出す
こんな所で、とも思った
でもまぁ、たくさん迷惑をかけたんだからこの位いいか
あと一歩の距離を踏み込んだ
「！」
父様が息を飲む気配がする
僕は広い背中に腕を回し、キュッと力を込めて父様を抱き締めた
『……色々とごめん』
父様の服に顔を押し付け、聞き取りずらかったと思う
それでもやっぱり、僕の声は父様にちゃんと聞こえていた
「もういい、
だが会えなかった分、私達に時間を捧げてもらうからな」
背中に腕が回る
久しぶりの体温に僕は気恥ずかしくなって顔を背けた
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LUNA - マジで想像力やばすぎて尊敬超えて尊敬(？)します。あと、最高すぎます｡ﾟ(ﾟ^ω^ﾟ)ﾟ｡ (7月31日 0時) (
レス) @page50 id: 5340503e64 (このIDを非表示/違反報告)
せそた - 夢魔のくだりから思ってたんですけど、型月ファンもといFGOユーザーですか？！ 透視の魔眼や詠唱がそれっぽくて思わずコメントしちゃいました すっごく面白いです！ (2022年4月10日 23時) (レス) id: 983e14398b (このIDを非表示/違反報告)
牡丹 - BL要素あるならBLフラグ立てた方が良いかと！違反になってしまうので (2020年10月14日 23時) (レス) id: b919622afe (このIDを非表示/違反報告)
ﾆﾉｺｺ(プロフ) - オタクさん» 私も好きです！笑 書いてて楽しいし笑笑 気に入ってもらえて嬉しいです！ (2020年7月4日 14時) (レス) id: 612b09e7e0 (このIDを非表示/違反報告)
オタク(プロフ) - お父さん怖いけど親バカで好き。 (2020年7月4日 8時) (レス) id: 3a06b234dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2020年3月27日 18時
