包帯の下の傷痕【太宰治】

13.劇薬 ページ14

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「太宰さん、お手を煩わせてしまい申し訳ありませんでした」
「気にすることはないよ。それより、君は軽すぎる。ちゃんとご飯を食べているかい？ 」


私がそう問うと彼女は少し動揺した素振りを見せた。これには国木田君も眉を潜める。きっと彼の理想には『後輩の栄養不足』なんてものはないだろうからね。


「A。ちゃんと三食食べているか？ 」
「た、食べてますよ！ 」
「じゃあ今日の昼飯はなんだ」
「え、えーと……えーっと…あ、ちゃ、炒飯です！」


苦し紛れの嘘だ。そんなの私の目から見てもわかる。国木田君はため息を吐いたあと、自身の手帳で軽くAちゃんの頭を叩いた。
Aちゃんは「いたっ」と云うがおそらくそんなに痛くないだろう。彼は優しいから、多少は手加減しているはずだ。


「嘘をつくな。莫迦」
「ご、ごめんなさい…」


叱る国木田君と反省するAちゃん。まるで飼い主に怒られている犬みたいだ。国木田君の怒りのオーラからは心配という色も伺えるから、ちゃんと娘が独り立ちできるのか心配でつい口うるさくなってしまう母親のようにも見える。


「おい太宰！ 何を笑っている！！ 」


楽しいなぁ。こんな莫迦みたいに笑えるだけの日々は。

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