名探偵の婚約者【江戸川乱歩】

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「予期できなかったって…っ、た、探偵様のくせにそれくらい予期できないなんて鈍ってるんじゃないの? 」


悪態をつく。恥ずかしさで爆発してしまいそうだが仕方ない。ああもう、なんでこんなことになってるんだよ…!! 頼むからこの羞恥から解放してくれ…! という切実な心の叫びを無視して、乱歩は更に羞恥を駆り立てた。



「…Aといたらふわふわして、自分が自分じゃないみたいになるんだよ。そんな状況で予期なんて出来るわけないだろ……」



ベレー帽を深くかぶり直し、顔を隠したつもりだろうが、耳が見えている。その耳は赤く熟れたトマトのようで、先程の言葉と兼ねられ私の羞恥はとうとう限界を超えた。否、それどころか一周回って冷静になれそうなくらいの羞恥心。



「またそんなこと言って…っっ、ば、ばーかばーか!! め、名探偵ならそれくらい予期しろばーかっっっ!!! 」

「はぁっ!? 僕の話訊いてたの!? Aといると君のことしか考えられないから予期できないの!! 」


「お熱いねェ」

「そうですわね。流石夫婦♡」

「あはは、仲が良さそうでなによりです」



乱歩と私が口論していると、三人が店内に入ってきた。友達、そしてなにより乱歩の仕事仲間でこの店の常連さんという彼女らを前にして、口が重くなる。

なんだか、莫迦みたいだ。


「…もうっ。乱歩が恥ずかしいこと言うから珈琲も出せないじゃない。ほら、あんたも座りなさいよ。……パフェ作ってあげるから」


「うん…」と言って席についた乱歩がなんだか幼い子供のようで、思わず母性本能が出たのだろう。パフェは生クリーム多めのものを作ってしまった。

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