私たちの主従関係【太宰治】

０５ ページ7

.








　お引越し...。治さんは何時も唐突に云うなぁ。
上を見上げて、シャワーから勢いよく噴射する水たちを顔で受け止める。

　眠気が取れてきたけど、まだ頭は覚醒してなくて、力が少し入らないまま、私はシャンプーに手を伸ばした。




「...引越し、か」



　今の家は充分広い。
なのに、どうして引越すのだろう。
二年間も放置してたからかな？


　まぁ、なんにせよ治さんの決めた事だ。
私が深く考えることでもないのだから、そこまで考えなくてもいいだろう。






「Aー！！ご飯できたよー！！」
「わかりましたー！」




　扉越しの会話も嬉しくて。
二年ぶりだなぁ、治さんとこんな風に言葉を交わすのは。




「ん...？十時十四分..って、治さん仕事だ！わわっ、急がなくちゃ..！」




　急いで髪と躰を清めて、私はお風呂から上がった。
今日は晴天。お出かけ日和。
そして、私の初面接の日でもある。








『A。武装探偵社においで？君ともっと一緒に居たいんだ。大丈夫、荒事からは私が護ってあげるからね...。』




　昨日交わした会話を思い出して、心が舞い上がっている。治さんが、久しぶりに私を使ってくれるのだから。


　頑張らなくっちゃ...！
気を引き締め、私は治さんのいるリビングの扉を開けた。

０６→←０４

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す