私たちの主従関係【太宰治】

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「すごい…まさに名探偵って感じがしますね！」


素直な感想を伝えると 彼は嬉しそうに頬を緩まし「当然だ。」 そう云って、駄菓子を貪った。
それにしても 頭脳派って凄い。憧れる。

私は頭脳に関しては小六くらいで止まっているから、そういうのは本当 羨ましい。特に、洞察力や観察眼が鋭い人。そういう人は 素敵だ。


体術を使える仲間を戦術的に上手く立ち回らせ 自分たちの仲間を勝利へと導く。本当は体術を使う人より 頭脳派の人の方が強い。そう、思えてしまう。


「…君、体術使いなのかい？」
「はい。そうです。」


思わず、手を隠してしまう。私の手は他の人よりも骨格が少しごつくて、女の子にしては可愛らしくない手なのだ。治さんに綺麗だと云われても憎い この手。

江戸川さんはその手をとって、まじまじと見つめた。恥ずかしくなって、手を隠そうとする私の腕に彼は力をこめる。


「努力してる手だね。綺麗だ。」


そんな単純な一言。でもそんな一言すら私にとっては嬉しくなって、思わず「本当ですか？」と聞き返してしまう。


「当たり前だ。僕は嘘は云わない。」


治さんはよくこう云う。
『Aは全部が綺麗』だって。

私はそれを少しだけ疑ってしまう。それは、彼も人間で 私の体 若しくは心のどこかを "汚い" 。そう、感じているのではと思ってしまうから。

だから、私はそう云われた時 治さんの目を真っ直ぐに見れない。故にそれが真実か否かはわからないが、これだけはわかる。


この人は本心で云ってくれている。
だって、目がそう云っていたから。

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