私たちの主従関係【太宰治】

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　可愛い可愛い私のAは今日も私の言葉に従って包帯を腕に巻いている。
人より少し細い躰の線、彼女の同年齢の子達よりも痩せている彼女は儚く、脆い。


　彼女が私に従順に従う様になって、早いものでもう十年にもなる。
十年...つまり、十二歳の頃から私は彼女を支配し、従順な子飼いとして成長させていた。




　彼女が知っているのは私だけでいい。
私に関する情報以外を脳に入れないでほしい。

＿＿...何度、そう願ったことか。



　けれど...私は彼女を不仕合わせにする為に彼女を飼っているんじゃない。
私は彼女を仕合わせにしたい。


　儚く脆く崩れてしまいそうな彼女を、この手で守ってやりたい。




　白い二人用寝台(ダブルベッド)の上で彼女の小さな手を握る。
私より一回り...否、二回り小さい手は私の存在を確認するかのように力を込める。


　手に入れられた力は子供と母親が手をつないで離さないような...なんてそんな優しいものではない。

　手に入れられた力は首吊りをする時に首にかかる力と大抵同じだ。彼女は非力そうにみえて、存外力が強い。






「...そんな所も魅力の一つかな？」




　彼女の頭と枕の間に腕を入れ、所謂...腕枕の状態で彼女と躰を寄り合わせる。
あゝ、私は仕合わせ者だよ。


　こんなに可愛いAを独り占めできるなんて。
こんなに可愛いAを、支配下に置けるなんて。

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