私たちの主従関係【太宰治】

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炎天下、私は歩く。静かなヨコハマの街をゆっくりと。初任務をこなすために歩いている。国木田さんに命じられた初任務は『御使い』。

太宰さんの包帯と晶子女医の鉈を研ぐ為の研石。それと、宮沢(？)さんの肥料と国木田さんの胃薬。後はトイレットペーパーとか、インスタント食品とか。


車を使ってもよかったのだが、今日は車の点検の為二台程しか残っていなかったらしい。云わずもがな二台は他の社員さんが使っている。


「でも、偶にはこんなのもいいかもな。」


何時もは治さんが外に出させてくれないし、何より私は四年間海外に在住していた。その理由をあげるとするならば解雇、だろうか。

解雇された理由は足手纏い(あしでまとい)だから。と云う理由で治さんに懇願したのだ。然し、そんな簡単に治さんが許すはずがなく…初めの一ヶ月間は死闘だった。


朝起きたら手錠で繋がれてるんだもの、吃驚する。結果的に私が解雇されたのは安吾さんのお陰だ。治さんの友人である安吾さん。とても優しい、いい人だ。あと苦労人だったりもする。

あの人の説得のおかげで治さんは私を一旦解雇し、海外への移住を許可した。海外での生活は楽しいとは云えないもので、矢張り本家は息が詰まると実感したりもした。

因みに私はハーフとかではなく純血の日本人。海外に本家があるのは私の父親の両親、所謂、祖父と祖母が海外に住むのが夢だったからだそうだ。母親は父と離婚して、私を無理やり連れていったものの結局養えず他の男と家を出て行った。

まぁ、母親の事は好きでもなかったし捨てられたお陰で治さんと会えた。そう思えば苦しくはない。私の世界を変えてくれた人なんだ。私の過去から母を取り除いてくれた優しい人。


大好き。大好きだ。
その気持ちに偽りはない。
それなのに、何故私は素直になれない。
…判ってる。私が治さんとは釣り合わないってこと。

だから一線を引いている、その筈なのに。
治さんが、抱き締めるから。

大好きが加速して、止められない。
大好きで埋め尽くされる。
つらいほどに。

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