私たちの主従関係【太宰治】

１６ ページ20

.







時計の針が時を刻み、秒針、短針、長針が全て真っ直ぐに立つと国木田さんが立ち上がった。敦君と鏡花ちゃんも立ち上がり、探偵社外へと出ていく。治さんも、私は膝の上に乗せたまま一段落だと云うように溜息を吐いたお昼休み。



「扨、お昼ご飯だね」
「そうですね。何か買いに行きましょう」



私が治さんの膝の上から降りようとすると、手をお腹に回され、立つことを拒まれた。どうやら、立つな。と云うことらしい。

私が「お昼ご飯、食べないんですか？」と訊くと治さんはニコッと笑って私が持ってきた鞄の中からお弁当を二つ取り出す。



一つは私が食べれそうな少量のお弁当。
おにぎりが三つ入るのが丁度いいくらいなのだ。流石治さん。私の好みを理解されている。そう感動しつつ、二個目のお弁当に目を向けた。


二個目はラップに包まれたおにぎりが弁当箱外に出ていることからお弁当箱の中身が全部副食だという事が読み取れた。

治さんは透明に包まれたおにぎりを外気に晒して、一口齧る。もくもくと口を動かしつつ、時折柔らかに微笑む彼はとても美しいものだ。




「A。私が食べさせてあげるから口開けて？」



あーん。と云って私の大好物、南瓜の煮物をお箸に乗せ、私の口へと運び入れた。味付けはまさに私が好きなあの味で




「治さんが作ったんですか!?」



南瓜を飲み込んでそう叫ぶと、治さんは目を細めて「そうだよぉ？」と云う。治さんは、とても料理上手なのに朝に弱い。

それ故、お弁当を作るのは彼にとってはかなり面倒くさいだろうに...何故、作ってくれたのだろう








「(私が作ったもの以外を口にするだなんて..嗚呼、そんなの許さないよ？)」



治さんの考えは私にはわからない

１７→←１５

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す