私たちの主従関係【太宰治】

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「治さんっ、お仕事は順調ですか？」
「あゝ。今日はAが居るから尚捗るよ。有難う。」



　緩んだ顔で私の頬を撫でる治さんに無意識に口元が綻んだ。治さんは私の背中に手を回して、そのまま自分の胸の中に寄せた。



「君が私の斜め前の席で必死に書類整理をしている所をみたら不思議と癒されてねぇ。作業をする手が進むよ...あ、敦君と国木田君はAの事見ないでね」



　治さんは威嚇する様に中島さんと国木田さんを見た後に私の薄黄色の羽織りの中に手を入れた。



「あー可愛い。今日も私のAが可愛い」
「仕事してください太宰さん。」



　中島さんの鋭い指摘を受けると治さんは私のお腹に頭を押し付けた。
可愛いよ。と呟き乍ら

うん、可愛いです。




「ほら、此方向いて？」



　治さんに呼ばれて、治さんの方をみる。
小さいリップ音と鼻への違和感。
鼻に接吻されたと思うと頭から足の先まで熱くなるような感覚に囚われて



　＿...恥ずかしい。
その思いが私を縛って、離さない。
治さんが回した手に応えるように私も手を回す。


そして、耳へ接吻して微笑んだ。






「(...真っ赤ですね、治さん)」



　私のように赤くなった治さんの顔を見て、顔が緩んだ。

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