私たちの主従関係【太宰治】

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「此方、ナオミの兄様ですわ！」
「はっ..初めまして、Aと云います..」



　可愛いのと谷崎君への恨みで感情がごちゃごちゃになる。私のAをジロジロ見られるのは気持ちいいものではなく、谷崎君がAに対して恋情を抱いていないとわかりつつも疑ってしまうのは私の悪い癖だ。


　可愛い可愛い私のAは人間の汚れなど知らぬ内から私の手の内に閉じ込められた為、純粋で美しいまま。
それが少しずつ壊されていく現実に苛立ちを感じた。





「A、私にも構っておくれよ」
「太宰さん..お仕事、終わったんですか？」




　Aを抱き締め、癒されたい衝動に駆られ彼女を呼び寄せるもナオミちゃんに阻止されあえなく失敗に終わった。
今日は躰中が彼女が足りないと悲鳴をあげている。

あゝ、A。A。




「..君がこの手の中にいないことがこんなにも辛いなんてね」




　早く君が戻ってこないか。
その思いで、私の心は塗りつぶされた。

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