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「お姉さん」
斗逢を眺めながら、俯いてたずねる。
「お姉さんにとって、幸せって、なに？」
ぼんやりと、昔斗逢とした会話を思い出した。
「幸せ…ふふっ、そんなの決まってるじゃない」
手をとめて、私の目を真っ直ぐに見た。
「誰かに、愛されること」
「あい、される…こと…」
「そう。家族や友達、恋人に、自分を認めてもらって愛されること。それが、"幸せ"よ。」
ゆっくりと、眠ってる斗逢に目線を戻す。
「もし、そうなら…A、もう、幸せになれない」
「なんで？」
「だって、斗逢がいないと、だれからも…あいしてもらえない…」
まともに学校なんて行ってない、両親からは愛の欠片もない。
そんなの、どうしたら…
「どうだろう。お姉さんはきっと、Aちゃんを愛してくれる人がいるって思ってるよ」
｢近いうちに会えるんじゃない？｣と、また笑った。
「そうかな…？」
「うん、きっとそう」
手当てをし終わった手を、私の手と重ねた。
「…お姉さん、なまえは…？」
「
篠佳さん、そう呼ぶと、嬉しそうに頬をゆるめた。
「そういえば、Aちゃん達の名字って、一条よね？」
「うん。でも、その名字、きらい。」
親と一緒だから……。と呟く。
すると「じゃあ、名字変えちゃえば？」と、手をパンとあわせて、提案してきた。
「…そんなこと、できるの？」
「法律上はダメだけど、源氏名としてなら大丈夫だと思うわ」
パチっとウィンクする。違う…名字か…。
「…かんがえとく」
斗逢を見つめて、今の自分はどうしたらいいのか、我ながらに小さい頭で考えた。
どうしたら、起きてくれる？
どうしたら、幸せになれる？
手をギュっと握って考えていた。
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作者名：月霜澪亜 | 作成日時：2022年12月7日 18時
