君と出逢ったあの日から。【三ツ谷隆】 (ページ14)

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逃げようとしても震えて動かない足。

真っ白で空っぽな頭。

荒くなる呼吸。

歪む視界。

左腕を掴まれ、恐怖が限界に達し、体に力が入らなくなった。
何も言わない私を肯定ととらえ、ズルズルと引きずられる。

あの時と一緒。

気持ち悪い笑みを浮かべて、いやらしい目で私を見てくる。
抵抗すれば、殴られ蹴られ、傷つけられ。それを笑いながら見てる私の父親が脳裏によぎる。

震える右手でタカから貰ったネックレスを握る。

怖い。

やだ。

痛い。

苦しい。

…息が、出来ない。

誰か…誰か、たすけ、て…

…タ、カ…

──タカ…たすけて…

「A！」

恐怖で怯えてても、スっと耳に入ってくる私を呼んでる声。…タカの、声だ。

視界が歪んでて…なにも見えないや…。

あれ…？もしかして、幻聴かな…？

ははっ、嫌すぎて幻聴まで聞こえてきちゃった。
かわいた笑みが漏れ、この後を想像して心が錆び付いていく。

…私は、、この人達と…

すると、途端に左腕が解放され、支えるものがなくなった体は地面にへたりこむ。

呼吸がまともに出来なくて、上半身が倒れそうになった時に、タカの匂いがした。

「A！大丈夫か！？」

タカの声、タカの匂い、タカの体温。…全部に安心する…。

…幻聴じゃ、なかった…