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「 _____に…ん、おに……さ_____ 」









誰かに肩を叩かれて、
俺は閉じていた瞼をゆっくりと開けた。

ここはどこだったか、俺は何をしていたか。



……確か、
危険な動きをしていた暴力団の男を監視していたら……

……その男が急に、奇声を、上げて、








「 お兄さん、気をしっかり持って。
  私の声が聞こえるなら少しでいいから顔上げて 」


「 ……っ、ぅ、、」








静かな女性の声がして、
俺は鈍い痛みが残る頭をゆっくり上に向ける。

女性の顔は影に隠されて、特徴が捉えられない。

ただそれだけじゃなく、もっと他の……
人為的ではない(・・・・・・・)何かの力が働いているように感じた。








「 ……腹部と頭部から出血があるね。

  左腕も……あぁ、これは折れてる。
  でも術式で何とかなりそうかな、よしよし。」








彼女は自由の効かない俺の体を観察して、
ポーチの中から白い包帯を取り出す。

……手当てを、してくれるようだ。








「 意識は?この指何本に見える? 」


「 …………に、ほん、? 」








目の前に突き出された彼女の指の本数を、
途切れ途切れに言告ぐ。

その後も声はどちらの性別のものか、
手に触れられて感覚はあるかなど質問された。


……彼女はあの化け物に遭遇しなかったのだろうか。








「 ば、けもの……は、……? 」


「 ん? あぁ、どうぞご心配なく。
  この後お兄さんの事も送り届けますからね。」








何かを誤魔化すように、
おどけた声が鼓膜を震わせた。


彼女は俺の頭と左の腰に手を添えながら何かを呟く。

すると徐々に血の匂いと鈍い痛みが消え、
それと入れ替わりで強い眠気が襲って来た。

彼女は、一体何を、したんだ……








「 き、み……は、」


「 大丈夫、さっき見たものは全部忘れるよ。

  アレ(・・)に遭遇した後の事は全部忘れて、
  それ以前の事は覚えたまま。」








責任もって送り届けるから、今はおやすみ。



まるで幼子をあやすようなその手つきに、
俺の瞼は少しずつおりていく。

意識がシャットダウンする直前、
彼女の驚いたような声が聞こえた。








「 ……わ、この人拳銃持ってる。警察の人かな?
  伊地知さんに調べてもらわなきゃ。」









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作者名:杠葉 | 作成日時:2021年7月15日 8時

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