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『 よし、三方向片付いた。あとは西だけか。』
いつ聞いてもいい気分にはなれない断末魔を聞きながら、
私は顔にこびりついた呪霊の血を拭う。
大体の呪いはすぐに消滅するものだけど、
この町のものは特別なのか、祓ってもなかなか消えない。
きっしょ(口悪)
〈 ……………… 〉
『 ？ どうしたの、空狐。』
〈 疾く乗れ、人間の気配だ。〉
突然、西の方を見た空狐が口を開く。
何のことだと思うかもしれないが、
私はこの言葉の意味を即座に理解した。
空狐は他の式神よりも数段上の嗅覚を持ち、
特に死の匂いや気配には敏感だ。
人間の気配……とは、
つまるところ��死が近い人間の気配��のこと。
自然死ならともかくとして、
万が一呪霊が関わっていた場合はマズイ。
早く行かないと、
取り返しのつかないことになる可能性もある。
『 空狐、急いで！ 』
〈 わかっておる、舌を噛むなよ。〉
全力を出した空狐の飛行速度は、時速200キロになる。
新幹線より100km遅いくらいだ。
結界を周囲に張っているとはいえ、
気を抜けば私も振り落とされかねないから怖い。
〈 ふむ……今にも死にそうだな。〉
『 反転術式でどうにかなったりしない？ 』
〈 まぁ何とかなるじゃろ。〉
好きで慣れてるわけじゃないけど、
何度も人の死を目の当たりにすれば慣れてしまう。
慣れって怖いね。
〈 この辺りじゃな、下ろすぞ。〉
『 呪い……は何とかなりそうだけど、
怪我人がいるなら手早く始末しないとね。』
空狐の背から飛び降り、
入り組んで光が入らない路地裏へと着地する。
今までの三ヶ所よりも強い気配がして、
酷い死臭もする。
『 ……来たな。』
影の中から呻きながらズルズルと現れた呪霊は、
ボコボコとその個体数を増やす。
え、想像しづらい？
カエルの卵想像すればいいよ。
集合体恐怖症の人はくれぐれも気をつけてね！
『 本当はゆっくり遊びたいところだけど…… 』
あの呪霊の背後から、血の匂いがするから、
あそこに居るのは恐らく、空狐が言っていた非術師。
出血多量なんだろうけど、まだ死んではいない。
『 あいにく、死者は出したくないんでね。
手早く終わらせようか。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿領域展開・
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作者名：杠葉 | 作成日時：2021年7月15日 8時
