鬼滅の刃短編集 (ページ1)

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結婚できない理由　煉獄杏寿郎ページ1

杏寿郎side
「マリア！好きだ！結婚して欲しい！！」

辺りに響き渡るような声で言えば彼女は眉を潜めた。

「また言いに来たかい？」

彼女は父と同じくらいの年で柱だった。

そして、俺の初恋の女性であり、今尚玉砕し続けている女性だ。

「答えを聞かせて欲しい！」

唸るような黒髪が揺れ首を振られる。

「何度も言っているでしょう？私なんかよりも若い子を見つけなさいと」

親子程も歳が違えば言われるのは当然だろう。

だが、いたいけにも彼女は俺の初恋を奪い今尚心を奪っている。

「君以外は考えられない！」

彼女以外を妻にと考えた事はない。

彼女は生涯未婚であるつもりらしいが、結婚して欲しい。

他でもない俺と、夫婦になって欲しい。

「杏寿郎、帰りなさい」

厳しく言われるが引き下がる訳にも行かない。

彼女に縁談の話が来ているのを知っている。

だからこそ、俺は任務が終わってすぐにすっ飛んできたのだ。

「帰らない！君が頷くまでは帰らないぞ！」

「柱になったのでしょう？私は貴方に教えられる事は何もないよ」

柱になる前はそんな口実でここに入り浸っていたが柱になれた今口実はなくなった。

「むぅ、どうすれば君は頷いてくれるんだ？」

「…君には頷かないさ」

ポツリと呟かれた言葉に耳を疑う。

「俺には？俺は駄目なのか？」

「君の父上に申し訳が立たない。帰りなさい」

ニコリと彼女は穏やかな笑みを浮かべる。

任務が終わる度に、時間が空く度にここに来ているがいつも穏やかな表情で俺を迎えてくれる。

「縁談の話は断ってくれ！もし、君が縁談を断らないのなら、俺が君を奪いに行く！」

冗談ではない、彼女を誰にも渡す気はない。

キョトンっと彼女は俺の方を見て目を丸めている。

「縁談？嗚呼、断ったよ」

「ならば、俺と結婚して欲しい！」

「それは駄目だよ」

出会った頃と変わらない綺麗な表情で彼女は微笑んでいる。

この微笑みに心を奪われたのだ。

「むぅ、俺は君が好きなんだ！」

「知っているよ」

彼女はのらりくらりといつも俺の言葉を避けてしまう。

「俺では君を幸せに出来ないだろうか？」

「そんな事はない。杏寿郎」

優しい手が俺の頭を撫でる。

「それならばっ！」

「私は君の帰りを待つだけは嫌だよ」

「むぅ…」

「だから君とは絶対に結婚しない。君が私の元までその二本脚で来てくれなくなるかも知れないからね」

初恋の人は俺が惚れた笑顔で笑った。