愛 29 ページ29
いや、姿形は一緒なのだから間違えても仕方ない。
「鶴丸、仲良くなったの？」
クイッと俺の裾を掴み横にいる鶴丸国永の方を主は向いた。
「驚いたぜ、きみ、俺達の見分けがつくのかい？」
俺も賭けをしといて驚きだぜ。
「鶴丸の表情が違うから、貴方、鶴丸と初めて合った時とそっくり」
「それで分かったのか、きみ恋仲か何かかい？」
えっ？と彼女は驚いて俺を見る。
「何となく、分かっただけで…///」
スッと彼女は俺の後ろに隠れた。
「可愛い主だな。きみ」
「きみにはやらないぞ」
彼女を鶴丸国永から遠ざける。
同じ鶴丸国永なら彼女が欲しくなるかも知れない。
「きみ、頑張れよ」
ひらひらと鶴丸国永は手を振って俺達を見送った。
「どうしたの？嬉しそうだね」
「きみが他の俺と区別がつくと思わなくてな」
正直心臓が止まるかと思った。
彼女が俺を見ている事が分かった。
見ていないと俺と区別はつかないだろう。
「見た時、直ぐに鶴丸だって思ったの」
「そうかい…///」
想像以上に恥ずかしいものだな。
「もしかして、見分けられないと思った？」
ギクリと内心すれば彼女は少しだけ目を吊り上げた。
「いや、きみなら分かると思っていたぜ」
「ふーん」
ムッとした彼女は俺の方を傍観しつつため息を吐いた。
「きみが見分けてくれて嬉しい、普通は分かる訳が無いだろうからな」
本当に嬉しいんだ。
彼女が少なくとも形の同じものに惑わされないでくれて。
「私の鶴丸国永は一人だもん」
「そうか、俺はきみにとって一人か！」
彼女にとって俺は先程いた鶴丸国永と変わる事が出来ない。
「皆ね、代わりなんて居ないの」
きみは自分の代わりがいると思っているだろう。
そんな事が口から出そうになる。
きっと言ってしまえば悲しそうにする。
「夢で鶴丸が本丸に居る事を望めば良いって言ってくれたんだ…夢だけどね」
昨日の事を夢だと思っているのか。
「望んでくれるだろう？」
「うん、少しだけ、救われた気がしたの」
握られた手が熱くなる。
目が熱い、心が痛む。
「きみを恨む奴なんていない、本丸の奴らはきみが良いんだ」
壊れそうな程に脆い彼女にどうしても言いたかった。
忘れないでほしかった。
彼女は望まれている、誰も恨んでなんかいない事を。
「…そうかな？私、貴方達に酷な事ばかりさせてないかな？」
「嗚呼、俺は人の器を持てて嬉しいぜ」
彼女を抱きしめる事も話す事もできるのだから。
続く (更新停止中)
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作者名：彼岸花 | 作成日時：2019年4月21日 15時
