愛 28 ページ28
手を握られ建物へと入る。
「君も審神者？」
痩せた高身長の男が彼女へと話しかけた。
「え？ええ、まぁ」
「此処に居るんだからそうに決まってるだろ」
彼女をナンパでもしようとしてるのか？
「あ、嗚呼、そうだよね！」
そそくさと男は去って行った。
「何だったのかな？」
「さぁなぁ。俺がレア刀だから珍しかったんじゃないか？」
「嗚呼、やっぱり鶴丸は珍しいのかな」
鈍感な彼女は気づかないか。
「そうだな」
決められている席に座れば一斉に視線が集まった。
何だ？変な視線だな。
「鶴丸、気にしないで」
小声で囁かれた声は少しだけ震えていた。
「あれが今年に入って来た審神者ですか」
「まだ子供じゃないか」
「力はあるそうだがあんな子供が政府直々に連れて来たのか？」
視線と共に聞こえる声は不快感を煽る。
彼女はこんな奴らの所にいるのか？
「きみ、帰ろう」
「は？鶴丸、まだ説明会があるのよ」
こんな場所にいつまでも居るのか？
説明会の為にこんな居心地の悪い所に居たくない。
彼女をこれ以上此処に居させたくない。
「きみは此処にいたいのか？」
そんな表情をしていない癖に。
「説明会だけ、後は帰ろ」
きゅっと手を握られる。
頼られるのは悪くないが状況がなぁ。
「これより説明会を始めさせて頂きます」
政府の人間と思しき男が進行を始めだす。
それと同時にパッと彼女に向いていた視線がなくなる。
長々とした説明の後彼女は知らない連中に呼ばれた。
「待ってて」
「俺も行く」
どうにもあの連中は信じられない。
「審神者様お一人でお願いします」
「ほら、仕方ないよ」
悲しそうに微笑んで彼女は政府の人間に付いて行った。
「きみの主は連れて行かれたのかい？」
声を掛けられ横を向けば俺と同じ鶴丸国永が居た。
「俺に話しかけられるとは変な気分だなぁ」
声も、格好も形も一緒だ。
「きみ、見た所主が好きだろう？」
やっぱりそう見えるだろうか？
「まだ良く分からん」
「きみの主は政府に気に入られてるようだからな、見とかないと駄目だぜ」
鶴丸国永は俺と同じ笑みでニヤッと笑った。
「…嗚呼」
「きみ、一つ賭けをしないか？」
「賭け？」
スッと鶴丸国永は俺の主を指差した。
「俺ときみ見分けられるかやってみよう」
甘い誘惑につい俺は頷いていた。
「あ、鶴丸！」
俺をやっと見付けたのか彼女は俺達の方によって来る。
ドクリと心臓が痛い程跳ね上がる。
もし間違えたらどうしよう？
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作者名：彼岸花 | 作成日時：2019年4月21日 15時
