愛 26 ページ26
きっと少しでも力を強めれば壊れてしまう。
壊れ物を扱うように彼女を布団へと寝かせる。
すぅっと彼女は落ちるように意識を落としていった。
「鶴丸殿…」
「一期一振、きみ今日は隣で寝るのかい？」
「ええ、近侍ですので」
彼女と一期一振を二人にさせたくない。
側を離れる事は今日、出来なかった。
「此処に寝ましょうか」
一期一振は布団をズルズルと引っ張って来た。
「そうだな」
ゴロリと寝転がり彼女の手を握る。
すると少しだけ微笑んだ気がした。
「鶴丸殿、主の事は秘密にしましょう」
「それが良い」
願うなら今日の事を覚えていると良い。
そう思い目を閉じた。
ーーー
「起きて…ねぇ、起きて」
耳元から声がする。
彼女の甘い匂いと共に優しい声が聞こえる。
「んー…主、まだ寝かせてくれ」
何だか胸元に柔らかいものが当たるな。
「寝て良いから、一旦離して」
パチリと目を開ければ至近距離に主の顔があった。
「え？…///」
段々と昨日の事を思い出してくる。
自分のつけた歯型がまだ彼女の首筋には残っていた。
「鶴丸、私熱は出したけど何で二人と一緒に寝てたの？」
よくよく見れば一期一振も隣に寝ている。
そして彼女は俺の腕の中だ。
「それはきみが離してくれなかったんだ」
「え！嘘…ごめん！」
昨日の事は覚えてないのか。
「人は朝おはようのキスとやらをするんだろう？」
確か誰かが読んでいた本に書いていた。
「鶴丸、それは夫婦だけだよ」
夫婦だけなのか…。
「そうか、駄目か？」
「そんな残念がらないでよ！分かった、ほらこっち来て」
彼女に近づけば照れくさそうに俺の頬へとキスを落とした。
「良い朝だな///」
「そうだね…///」
昨日の告白も覚えていないのか。
昨日言った本音も、何もかも覚えてないのか。
「一期、起きて」
トントンと彼女は一期一振の肩を叩く。
「ん…おはようございます」
「おはよ。昨日は二人共看病ありがとね」
一期一振は困っようにこちらを向いた。
「覚えちゃいないぜ」
「そうですか」
昨日の事は秘密だな。
「何かしたの？」
「昨日のきみが可愛かったって話だ」
「本当に私何かした！？」
してないなぁ、俺達の事を思っているのが良く分かった。
覚えてないなら償いがどうとかまだ思ってるって事だろうな。
「秘密です」
「一期、私不快な事したの？」
「いや、きみが俺達の事が大好きなのが良く分かったぜ」
彼女は訳が分からないと言うように首を傾げた。
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作者名：彼岸花 | 作成日時：2019年4月21日 15時
