愛 3 ページ3
「顔赤いけど…うわっ、桜が！」
ブワリと桜がまい鶴丸の顔は赤く染まった。
何、その顔。
まるで…人間みたい。
「あんた顔が真っ青だぜ？」
日本号が私の顔色のなさに気付いたのか私の顔を覗き込んだ。
「あ…いや、何でもない」
「主！可愛いのに何で顔を隠してたの？」
清光が雛鳥のように私の手へと触れた。
「政府が神隠しに警戒してたから」
そんな理由じゃない、情が移るのが怖かったんだ。
「主君、綺麗ですよ！」
「前田、ありがとね」
短刀の彼らだって私よりも長く生きた者達だ。
「ほら、ご飯にするよ」
光忠が食事を運び終えて席へと座る。
「私達も席につこうか」
ぼんやりとしてる鶴丸を引っ張って席につかせる。
そんなに酷い顔だったのかな？
鶴丸は未だにぼんやりとしたままだ。
ため息を零し、光忠が作ってくれた食事を食べる。
美味しいけれど、何だか視線が痛い。
「鶴丸、布返してよ」
グイグイと鶴丸が持つ布を引っ張るがびくともしない。
「鶴丸ってば！」
肩を揺さぶれば彼の瞳はやっとこちらに焦点を合わせた。
「きみ、何を怒ってるんだ？」
「鶴丸が布取ったから怒ってるんでしょ？」
本丸の皆は微動だにしない奴までいる。
長谷部とかご飯食べてるようで食べれてないし、溢してる。
光忠とかめちゃくちゃ良い笑顔でこっち見てるし。
「勘弁してくれ…」
刀だって思いたいし、主として接したい。
「きみが可愛いからだぞ」
「はいはい、お世辞は良いから返して」
グイッと引っ張れば鶴丸は少し驚いたようだった。
「きみ、力強いんだな」
そう言いながらも一ミリも取り返せていない。
「主、それいらないんじゃない？」
「清光、何言ってるの」
確かに邪魔だと思ってたけど表情が分かるのは嫌だ。
存外私は表情に出やすいのだ。
「だって俺、主の顔見たいからさ」
私は見たくない、これ以上見ていれば皆が人のように感じてしまう。
人らしい表情で言われてしまえば拒めない。
「主、主命で言えばいい事だろう？」
三日月が穏やかな声で言った。
それが出来たら苦労しない。
私は一度たりとも彼らを強制したくない。
「…鶴丸、返して」
「きみ、もしかして俺達が人の子のようで怖いのか？」
図星をつかれて流石に何人かには気づかれてしまったようだ。
「ッ！政府に言われたからだもん！」
バタバタと食堂を後にすれば光忠が慌てて食事を運んでくる。
まるで子供だ、私には審神者としての自覚が足らな過ぎる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：彼岸花 | 作成日時：2019年4月21日 15時
