愛 15 ページ15
「あ、犬みたいで可愛いなと思ったの」
猫も良いけど犬も可愛いなぁ。
「あ、鵺ー！」
「え？きゃぁあ！」
獅子王の叫びと共に鵺がこちらに突進して来た。
その顔にはクリームがいっぱいついており得意げな表情だ。
「鵺は犬じゃないでしょー、もう」
顔中にクリームがついているから私の顔にもついてしまう。
「鵺ぇ、主が困ってるだろ！」
獅子王があわあわと鵺と私を離そうと引っ張る。
鵺の方は嫌々と首を振った。
「なぁに、シュークリーム食べれたの自慢しに来たの？」
コクコクと鵺は頷く。
全く、なんて愛らしい事だろう。
撫でれば嬉しそうに丸まった。
「可愛いなぁ、ほら口あけて」
小さくあけた口に運んでやれば嬉しそうに咀嚼した。
トントンと横から肩を叩かれた。
「ん？」
見れば小狐がニコニコと座っている。
「えっと、あーん」
取り敢えず彼の口にシュークリームをやれば嬉しそうだった。
「主さま、私めも撫でて下され」
ぴょこんと跳ねる毛が可愛くてワシャワシャと犬にするように撫でる。
大っきいワンちゃんだ。
「主さま、もっと撫でて下され」
「はいはい、今日も内番ご苦労さま」
小狐は来た時からこんな感じだよなぁ。
無条件に信じるひよこの刷り込みのようだ。
此処にいる刀全てそれに該当するのだろう。
長谷部を観ていると嫌と言う程思う。
「主、俺も食べさせてくれんか？」
鶯丸がお茶を飲みながらこちらに来ていた。
「口をあけて…あーん」
「んむ、何か出てきたぞ」
鶯丸がシュークリームを頬張りながらお茶を飲んだ。
「美味しい？」
「嗚呼、美味い」
「そっか、良かった」
最近鶯丸は来たから一応美味しいと言ってもらえて良かった。
「…長谷部、あーん」
何となくこの生真面目な刀があーんとするのか気になり近くにいた長谷部にやってみる。
「主ッ！？」
焦ったような嬉しいような表情で長谷部が驚いた。
「ほら、あーん」
桜を舞わせた長谷部がおとなしく口を開いた。
あ、やっぱり自分から言わないけど食べるのね。
して欲しそうな表情だったから言うかと思ったけど、私の言う事ばかり聞く刀ね。
「いち兄一口でいけよ！」
「薬研、少し大きくないか？」
「大丈夫だ」
薬研と一期がシュークリームを前にしてそんな話をしていた。
兄弟がいると表情が違うのね。
一期が来て短刀達がもっと元気で明るくなった。
「ご馳走さま、仕事があるから戻るね」
側にいた長谷部に声をかけて自室に戻る。
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作者名：彼岸花 | 作成日時：2019年4月21日 15時
