愛 13 ページ13
聞けない、私は鶴丸を怪我させたくはない。
それが誰であってもきっと助けに行ってしまう。
「きみはもう戦場に出るべきじゃない。いつかきみはきっと怪我をする」
今までしなかったのがおかしいくらいだ。
そう暗に言っているのが分かる。
分かっている、政府も皆も私が出陣する事を快くは思っていない。
けれど、私は朽ち果てるなら戦場が良い。
皆に守られながら逝くなんて死んでも嫌だ。
「嫌、私は絶対に貴方達だけ戦わせるなんてしたくない」
自分のエゴを押し付けてるのは分かっている。
それでもこれだけは退けない。
「違うやり方だってあるだろう？」
「鶴丸は私が貴方達が帰って来るのを祈るだけの将が良いの？」
キッと睨みつければ彼は少しばかりたじろいだ。
「…嗚呼、俺達の手入れをするのだって立派な将だろ？」
確かに普通はそうだろう。
けれど望んで此処に来てないなら私は自分の好きなようにさせて貰う。
此処は私の本丸だから何と言おうと私は戦場に出る。
「無理よ、私には出来ない」
自分だけ安全な場所にいるなんて私には出来ない。
「きみを説得するのは無理そうだな」
ホッと鶴丸が諦めてくれた事に息を吐く。
「諦めてはいないさ。きみを守るのは俺だ、きみ自身じゃない」
ガシリと鶴丸は私の手を掴み私を引き寄せた。
「鶴丸…？」
どうしてまた泣きそうな表情をするの。
貴方の主かも知れないけれど、貴方には一瞬の出来事でしょう？
だから、私なんて犠牲の一つなのに、何故？
「きみは知らないんだな。自分を大事にする事を」
ポンポンと頭を撫でられる。
「鶴丸は刀なのに、何でそんなに人の事が分かるの？」
何故私よりも人が分かるの？
「人を観てきたからなぁ」
「私は自分を大事にしてるよ」
大事だから私は自分の身を自分で守るんだ。
貴方達を守るのも自分の為、折れて欲しくないから。
「嗚呼、俺がきみを大事にしよう」
ぎゅうっと抱き締められる。
体温が心地良くて少しだけ涙が溢れた。
悲しいのか嬉しいのかごちゃまぜで何も分からなかった。
「鶴丸、いくら大事にされてもやっぱり私は貴方達だけ戦わせるのは嫌なんだ」
「きみは言い出したら聞かないからな。俺が一等なら俺をいつも側に置いてくれ」
「うん」
私の刀、私の大事な一等。
「ハハッ、きみは本当に俺達の願いばかり叶えるなぁ」
離れた体温を求めて顔を上げれば悲しそうに彼は笑った。
「…嫌だった？」
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作者名：彼岸花 | 作成日時：2019年4月21日 15時
