検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:17,747 hit

彼 59 ページ9

「はぁ…はぁ…ベルモット!薬、頂戴!」

走って向かった先は自分の研究室。

そこに行けばベルモットが私の椅子へ座っていた。

「薬?」

「そこの引き出しの薬ッ!」

ベルモットへと叫ぶと慌てて彼女は薬を取った。

渡される薬を水も飲まずに飲み込む。

「はぁ…けほっ…ゴホッ!…はぁ…」

吐き気と目眩が段々と治まってくる。

「何の薬なの?」

ベルモットが心配そうに薬を見ていた。

「過呼吸の薬よ、変な物ではないわ」

「過呼吸?Queen、貴女、不眠症だけじゃなかったの?」

指摘され自分の失態に気づく。

しまった、私とした事が頭の回転の悪さにため息が溢れる。

「数年前から突然なって、直ぐに薬飲めば治るわ」

「本当なの?」

「うん、心配しないで」

「そう、分かったわ」

「ベルモット、今日から一週間此処に籠もるから貴女達以外は此処へ来させないで」

「Queen、ジンが許さないわ」

「許さない?何故?何かあった?」

ベルモットの方を向くと彼女は頷いた。

「貴女が勝手に抜け出したから今の所ずっと怒ってるのよ」

何故そんな怒る必要が?

バーボンと一緒に逃げたとでも思ったのだろうか?

「ジンを呼んできてくれる?」

「その必要はない」

背後に立っているジンがコツリと靴音を鳴らした。

「ジン、用事が合って少し抜けたのにどうしたの?」

「バーボンとお前が居なくなったからだ」

「バーボンが消えたのは用事が出来たからで、偶々一緒にでていっただけよ」

ジンは後ろからジッと観察していた。

「本当か?」

「うん、会って間もない人と一緒に残されたのは驚いたけどね」

「そうか」

「一週間出来れば誰も此処に入れないでくれる?」

「またか。わかった」

ジンはそれだけ言うと去って行った。

「ベルモット、さっきのは内緒ね」

「Queen…」

心配そうな顔をしている彼女に微笑む。

ベルモットは渋々と去って行った。

正直な所一週間籠もるとは思えなかった。

只、彼等に会えなかった。

逆戻りしただけではないか。

私が逃げ続ける最大の原因に零と重ねるていたなんて今まで無意識だった。

なのに自分でも知らない内にあの人たちに捕まると気持ちが焦っていたのだろう。

零があの人に見えたなんて笑える話だ。

嫌な感覚がまとわりつく。

もう零と顔を合わせられるかが不安だ。

眠ってしまおう。

そう思い大量の睡眠薬を飲み込んだ。

彼 60→←彼 58



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.4/10 (18 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
16人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:彼岸花 | 作成日時:2018年10月3日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。