彼 53 ページ3
カタカタと書き込めば私の記録には失敗の2文字が入った。
「はぁ…」
没だ、この研究はやめよう。
「百合、その…」
珍しく弱気な赤井さんがこちらに声を掛けた。
「赤井さん、別にもう気にしてないよ。仕方ない事だったし」
「そ、うか」
何故そんな挙動不審なんだ。
そんなにもう怒ってないのに。
「うん、で、どっちから行けば良いんだっけ?」
「FBIだ」
「ポアロだ」
「えー…ポアロから行くね」
「何故だ」
「だって、風見さんとも話をしないといけないから」
「風見…?」
一気に部屋の温度が下がった。
「一度会いましたよね?」
「ホー、それでどんな話をするんだ?」
さっきまでの弱気な態度は何処にいったんだ…。
打って変わって厳しい視線でこちらを見ている。
「え?えっと…喧嘩しちゃって」
「喧嘩?君がか?」
意外そうに赤井さんが呟いた。
喧嘩と言えるのかも謎だが、喧嘩に近いだろうか?
「赤井、お前には関係ないだろ!」
一応彼は恋人だから関係なくはないのかも知れない。
「兎に角ポアロに帰るぞ、百合」
「あ、うん。では、また赤井さん」
零に引きずられるように車に乗せられる。
ジッと彼はこちらを見ていた。
扉が閉まるまで彼の目線がそれる事はなかった。
「赤井とは連絡をとったりしないでくれ、貴女はもう少し用心すべきだ」
「う、うん。でも、一応私の友人でもあるから…」
本当の所は恋人なのだが。
取り敢えず話題をそらしたほうが良いだろう。
「零、本当の年齢知ったら驚いた?」
「驚かない訳がないだろ」
それもそうか…。
「騙そうとした訳じゃないんだけど、警察学校に入るには早すぎる年齢だったからなの」
「当然だろ、19歳でも早いのに16歳は早過ぎだ」
「でも、皆分からなかったよね」
身長は直ぐに伸びたから良かったが皆気付いていなかった。
「貴女は大人びている、時々幼い理由がわかったよ」
「そう?零達と会う前にねジン達と会ったんだけど子供としか思われてなかったよ」
「本当に貴女は反省してるのか?」
零にじろりと睨まれた。
「うん、でも零達も大事だけど彼等も私は大事だから」
人殺しだと言えば人殺しだが、彼等だって普通の人間なのだ。
憎まれても私は彼等が大事だ。
まぁ、ケースバイケースなのだが、立場的な問題もあるだろう。
「そうか」
ポアロにつくとポツリと零が返事した。
「あ…」
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作者名:彼岸花 | 作成日時:2018年10月3日 19時