彼 68 ページ18
そう考えていると視線が刺さった。
「いや、いや、赤井さんと重ねるなんてないよ!赤井さんみたいな人と付き合ったことないもん」
彼のように嫉妬深い人は居なかった。
私が好き勝手している間に彼氏は私と距離を感じて別れたから、赤井さんのように距離を縮めてくる人は初めてだ。
初恋の人を除いてだが。
「ホー、付き合ったことはあるわけか」
「え!あ、そりゃあ人並みにはあるとは思うけど…」
そりゃあ20何年生きていればそういうものだろう。
「何人だ?両手に足りるのか?」
「えーと、赤井さんの方が断然多いでしょう?」
「何人だ?」
「お、覚えてないよ」
「覚えてないくらいどうでも良いのか」
「え、そりゃあ過去なんて今更どうでも良いよ」
初恋の人以外はどうでも良いものだと思うのだけどね。
「君はそんな所があったな、俺にいても嫉妬もしないしな」
「嫉妬しても時間は帰って来ないし…」
「俺と別れたら仕方ないと諦めて忘れるのか?」
「まぁ、別れると言うならそう、かな?」
「ホー、過去の男達と同類にされるのか」
それは過去の男達と同類にされたいという事だろうか?
「…それって別れようって事だったりする?」
私はまだ赤井さんと別れたいなんて思っていなかったのにな。
「何故そうなる」
緑色の瞳が大きく見開かれこちらを見詰めた。
「違うの?あんなに避けたし仕方ないとは思うけど…」
「別れる気なんてないぞ」
「本当?そっか、まだ赤井さんといたいから良かった」
「君は俺が別れると言えばすぐ引き下がるのか?」
「え?ま、まぁ、そうじゃないかな?」
別れないと自分から別れを切り出すのは怖いから、あの人達の所へ帰る時はもう彼は隣に居ないから。
「ホー…」
そう考えて居ると赤井さんは苛立ったように私の首元に噛み付いた。
「え?赤井さん…?怒って、る…?」
「怒らない訳がない」
「えぇ!?な、何で!」
「君は俺に執着がないんだろう?だから直ぐに俺と別れられる」
「無い訳じゃないよ、赤井さんの事大好きだし、只、別れるなら仕方ないと思うだけで」
別れると言われても彼に別れたくないと言ったって彼は聞き入れる人間じゃないだろう。
「それは執着がないのと一緒だ」
執着、彼に私は執着しているのだろうか?
彼の私を射抜く視線には独占欲があり私に執着しているのが見てとれた。
嗚呼、これが執着か、なら私は?
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作者名:彼岸花 | 作成日時:2018年10月3日 19時