彼 67 ページ17
だから、何故そうなるんだ！
勘繰り過ぎだよ、いくらなんでもそれはない。
「違うよ！赤井さんが好きだよ、でも、赤井さんとキスするのだって安室さんの事思い出しちゃうから」
よし、上手く誤魔化せた気がする。
「ホー、それでは君は安室君の事が好きだと言ってるようなものだぞ。嘘をつくな、本題に入れ」
やっぱり彼に嘘をつくのは無理かも知れない。
だけど、意思を変えたくもない。
「言いたくない、は駄目？」
「駄目だ。君はニ週間も待たせた。挙げ句に男にノコノコと付いて行って」
「根に持たないでよ」
「君が悪い」
はぁ…とため息を一つして私は話し出す。
「その、私の兄弟っていないって言ったでしょう？」
ちらりと彼の表情を盗み見る。
まだ怒っているようだ。
「嗚呼」
「本当はいるの」
血の繋がっていない兄弟が。
忌々しい程に憎い兄が。
「…恋仲だったのか?」
本当に察しが良すぎる…流石FBI。
でも、そうじゃない、私はそうじゃなかった。
そう思い、反射的に叫んでいた。
「違うッ!私は、私はお兄ちゃんみたいで本当の兄弟だと思って過ごしてたの！なのに…」「何かされたのか？」
「分からない、只、兄弟みたいに触れて話してたのにいきなり告白されたから、怖くて」
夢にまで出て来る程に怖いのだ。
もう、知らなかったあの日には戻れない事はわかっているのに戻りたい。
「安室君と君の兄が重なったわけか」
兄の様な安室さんが大事で、でもそれは安室さんを利用してるって事も分かっている。
けど、どうしてもこの関係が大事なのだ。
「そう」
「なら会うな、元々安室君と君が一緒なのは好きじゃない」
きっぱりと冷たく宣言された。
「でも、安室さんは関係ないからそんな一方的に嫌えない」
元はと言えば私が兄の代わりのように彼を見たのが悪いんだ。
彼には酷い事もしてしまったし。
「ホー、そんなに安室君に会いたいか？」
赤井さんの私の身体に触れる手の力が強くなった気がした。
「うん、だって、仲が良かった時のお兄ちゃんみたいだもん」
「君はもしかして俺も誰かと重ねているのか？そんなの勘弁だ」
ふわりと抱き締められればそんな事を言われた。
「え…？元彼とって事…？」
「重ねたのか？」
地の底から這い出たような低い声が私を射抜く。
そんなに元彼と重ねたら嫌なのだろうか？
元彼と似ている所なんてないし、初恋の人意外覚えてないのに…
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作者名：彼岸花 | 作成日時：2018年10月3日 19時
