結ばれない恋を 太宰治 ページ35
太宰side
ねぇ、今君は誰を見ているんだい?
そろそろ私を見てはくれないかい?
「ねぇ、奏」
「何?」
目の前で静かに佇む奏に呼び掛ける。
「私と付き合わないかい?」
「ごめん、私は森さんが好きだから」
顔色を変える事なくそう言って、奏は踵を返した。
何で私じゃ駄目なんだい?
私は君を悲しませないし、君を一人にさせないよ。
「何時もそう言って長く続かないじゃあないか!」
この前は中也だったし。
何がしたいのかが分からない。
本当に好きなのに。
「…今度は続くかも知れないわ」
認めたくない、何故、私だけは見てくれないのか。
私以外には心を惹かれているのに。
私には微笑み掛けてもくれない。
私を許してくれて無いからかい?
いや、この真実を君は知らないのだろうね。
私が君の兄を殺した何て。
「好きだよ、奏」
其れでも君を好きになったんだよ。
君に惹かれて、恋い焦がれたんだ。
だから、私を見てはくれないかい?
「…ッ」
ほら、だんまりだ。
一度だって君は返事をしてくれない。
何処を見てるの?
ねぇ、私は君の前に居るのに…。
何時も君の虚ろな瞳は私を見詰めてはいない。
私を通り越した何かを見ている。
「好きだ、愛してる」
どれだけ声を枯らして叫んでもきっと君には届かないのだろうね。
届いてよ、私は君が好きなんだ。
私を見てよ、愛してるんだ。
「太宰、帰ろ」
私の言葉何て何でも無さそうに言った。
「返事位したらどうだい?」
「…何故?」
静かな声が私を射抜く。
「君が好きでたまらないのに、君は明確な返事を出さないじゃあないか」
少しも希望何て無いのに、希望を持ってしまうよ。
「…そう」
目を伏せて奏は目を逸らした。
「幹部命令」
意地悪なやり方でも君の本音が聞きたいんだ。
「…」
カチャリと銃を構えた。
「何を、するんだい?」
「幹部の命令は絶対。違う?」
自分に銃を向けたままの奏がそう言う。
「…君を殺したい訳じゃないんだ」
「なら、その命令を撤回して?」
いっその事君と無理心中でもした方が良いのかな?
君の心を手に入れるには其れ位しないと入りそうに無いや。
「分かったよ」
撤回するが、君を諦める事は無いから。
「一緒に心中でもしないかい?」
「…心中は…」
何かを言い掛けて奏は口を閉ざした。
「何?」
「何でも無い」
君と一緒なら死にたいな。
ねぇ、良いだろう?奏
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彼岸花(プロフ) - 桜唄さん» ありがと (2017年3月20日 17時) (レス) id: 81cc73b64b (このIDを非表示/違反報告)
桜唄(プロフ) - 彼岸花さん» はい。 (2017年3月15日 23時) (レス) id: 920de4e9ca (このIDを非表示/違反報告)
彼岸花(プロフ) - 桜唄さん» え、本当ですか!? (2017年3月15日 23時) (レス) id: 96fec89993 (このIDを非表示/違反報告)
桜唄(プロフ) - 彼岸花さん» 済みません、もうはずせてようですよ? (2017年3月15日 22時) (レス) id: 920de4e9ca (このIDを非表示/違反報告)
彼岸花(プロフ) - 桜唄さん» やってみます! (2017年3月15日 22時) (レス) id: 96fec89993 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼岸花 | 作成日時:2017年2月20日 18時