太宰さんや、文豪たちに愛される短編小説 (ページ29)

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電話に出てよ　太宰治ページ29

太宰side
さっき電話したのに出なかった。

何で出てくれないのかなぁ?

「はぁ…」

こんなに出ないと色々疑ってしまうよ。

何してるのかなぁ?

私からの電話に出ないなんて。

「太宰さん？」

敦君が私を覗き込んでいた。

「何だい？」

「何か難しい顔をしてたので…」

私がか。

其れは奏のせいだ。

「奏が電話に出ないのだよ」

全く…何時もなら直ぐに出てくれるのに。

「さっき会いましたよ？」

敦君はキョトンとしていた。

何で敦君と話してるのに私の電話に出れないの？

「へー、何処に?」

「え、えっと、一階のカフェに！」

一階のカフェに？

そんなに近くに居るのに出ないのか。

「ふむ、もう一回かけるか」

私はもう一度電話をかけた。

「プルルッ…プルッ…プツンッ」

切られた。

良し、一階に行こう。

「止めて下さい!返して!」

下は賑わっていた。

何で私の恋人を囲って賑わっているのかなぁ?

「良いじゃん、少し位」

「だから嫌だってば!しつこいわ！」

奏が男の手を振り解く。

「綺麗な顔が台無しだぜ？」

「貴方のせいなんですけど？」

強気な奏が言い返した。

「そうだよ。私の恋人に触れないでくれ給え」

ニッコリと嗤って男の手を掴む。

私の恋人に触れたねえ？

「太宰？何時の間に」

奏がポカンとしていた。

「君、電話に出なかっただろう?」

とても心配していたらナンパされているなんてね。

「まぁ」

「恋人？嘘だろ！」

男が叫ぶ。

何を言っているのかなぁ?

「君、今死にたい？」

男を見下す様に睨み付ける。

私の恋人に触れたのだから其れ位覚悟してもらわないとね。

「ッ‼」

男は血相を変え店から出て行った。

「助かったよ」

安心した様で、奏は私により掛かった。

此の華奢な身体をさっきの男に触られたのか。

「ねぇ、何もされていないよね？」

「…うん」

僅かに頷く奏。

「電話に出てよ」

とても心配したのだから。

これからは発振器だけじゃ足りないかもね。

盗聴器は直ぐバレちゃうし。

「ごめんね」

そう言いながら携帯を見る奏。

「…こんなに着信履歴が…」

驚く奏、其れはそうだよ。

「ストーカーみたいかい？」

青ざめながらも首を縦に動かす奏。

「ふふっ、消毒しようか」

触れられた手を舐める。

「ひゃっ！ちょっと!」

「んん?私しか触れては駄目だからね？」

此の綺麗な手を捕まえて置きたい。

次はちゃんと出てね？