第四十四話 ページ46
*
楽しい事はあっという間に終わってしまうもので。
交流会を終えたクロエとエドワードは、友人としての距離は以前に比べて近くなった。
朝はどちらからともなく挨拶をする。
とてもとても小さな進歩。
まぁ仲良くなったと言っても、どちらとも一線を引いている感じで、お互いの領域に踏み込むことはしない。
一定の距離を保ち、互いに干渉し合うことはないのだ。
そんな感じで過ごすこと、2週間後。
次の授業の準備をしていれば、臨時の全校集会を行うから体育館に集まれと、急に放送が入った。
生徒の殆どが困惑の表情を浮かべ、体育館へと足を進める。
「急に集まらせて悪いのう…。
主達は【PHANTOM B】を知っておるか?」
只今、理事長の話中。
発せられた単語を聞いた瞬間、体育館中かざわめいた。
周りから聞こえてくる【PHANTOM B】についての話。
吸血鬼も、生贄も知らないはずがないあの【PHANTOM B】の話を___。
【PHANTOM B】
それは、吸血鬼と人間で構成された組織の名称だ。
彼等は、私達生贄の持つ特殊な血【ハニーブラッド】の血を狙う犯罪者集団。
法律上、この特殊な血の販売目的の摂取は禁止となっており、違反者は罰せられてしまう。
けれど、その法の目を欺いて密売している組織が【PHANTOM B】なのだ。
「どうやらそやつらがこの学園に忍び込んでいるようでな。既に被害者3名が出ておる。」
その瞬間、体育館のざわめきが増した。
けれど、理事長が次の言葉を口にすればそのざわめきも収まるのだ。
「この学園は無駄に広いからのう…忍び込みやすかろう。
まぁ、そこでだ、怪我人が出た時の為に治癒能力のある吸血鬼で臨時救護班を作ろうかと思うておる。
誓約を結んでいる者達は、パートナーの人間を死ぬ気で守りきれ。
そうでない者たちは、親しい人間達を守るのじゃ。
人間達は、絶対に1人になるでないぞ。必ず吸血鬼と共に行動するように。
以上じゃ。」
それから他の先生から追加の説明を受けた。
これからは特編授業になり、移動教室や体育などの授業は全てカット。
そして、授業は全校生徒を交流会が行われたホールに集めて行うらしい。
そして今からは、私物を持ってホールに移動。
1年近くこの学校で過ごしてきたが、こんな事は初めてだ。
見た感じは平然そうに見えているだろうが、不安や恐怖、そんな感情が彼女を支配していった…___。
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ