第二十六話 ページ28
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「はぁ……全く、最近の餓鬼ときたら乱暴じゃ」
彼に掴まれた首元を擦りながら、ため息混じりにそんな言葉を零した。
それと同時に、ギィィとドアの開く音がするが、そこに視線を向けることなく入ってきた人物の名を呼ぶ。
「随分遅かったのう、ゼノ」
「女の子に引き止められちゃってさぁ〜めんご☆」
「今すぐその語尾の星を取れ。沈めるぞ、クソ餓鬼。」
なんて冗談を言えば…いや、理事長が言うとそれが冗談に聞こえないのだから怖いものである。
入ってきたのは男、ゼノ・スティーヴァンは軽く冷や汗をかきつつも話を切り替えるように、わざとらしく咳払いをした。
「それで、どうしたんっすか?急に呼び出して」
「嗚呼…なァに、例の余興の事じゃよ」
理事長の言葉に、ゼノは何かを察したのかニヤリと口角を上げてコクリと頷く。
そんな彼を見て「物分りの良い童は嫌いじゃないぞ」なんて、こちらも妖しげな笑みを深めたのだった…____。
数分遅れで朝のSHRが始まる。
担任の先生は、プリントを見ながら連絡事項等を伝えてくれていたのだがとある内容で教室中にざわめきが生まれた。
「えー、今週末、交流会が開催される事になった。各自、パートナーを連れて参加するように」
そう、交流会である。
交流会というのは簡単に言えば、吸血鬼と人間達の仲を更に深める事を主にしたパーティのようなもの。踊って食べて、そしてあわよくば、そのまま誓約相手を見つけちゃお☆
という何ともおちゃらけた学校行事である。
一応学校行事である為、全生徒強制参加。
欠席したものは罰則があるらしい。
さて、ここで問題点が1つ。
これまでの1年間弱、交流会がなかったわけではないが、今回の交流会はいつもとは違う。
誓約者は別だが、これまでパートナーとして連れてきた相手以外をパートナーにしないといけない。
という変なルールが今回はあったのだ。
これまでの交流会は、ゼノをパートナーにし参加していたのだが、今回はそれが出来ない。
慣れない異性の手を取って……__。
なんて、そう考えた瞬間、頬に熱が集まってきた。
無理だわ!絶対に無理よ…っ!!
この照れ屋反応を示さないゼノじゃないとダメなの!!
なんて心中で虚しく叫ぶも、理事長が考えた事に異を唱えるものはいない
否、唱えられないのだ。
くそぅ……理事長め。
これで何度目だろうか。
数度目の恨めしさを感じた。
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