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「貴様はそのまま人質と共にこの飛行船に乗れ。」
「ッ、」
「パクノダ。彼らによろしく頼むよ。」
クラピカの声に動揺を一瞬露わにしたパクノダに、声を掛けて歩き出す。
それもそうだ、パクノダからすれば敵地に私1人を放り込むような物だったから。
団長さんとすれ違うようにクラピカの元へ歩く。
ピリピリと感じる殺気は、イル兄を使ってまでアジトを抜け出して着いてきたヒソカのものだろう。
ヒソカはこれから団長さんと一戦交える気でいるようだ。
私たちの乗った飛行船が、浮かび上がる。
地上に降り立ったままの彼らが視界から消えた瞬間、フッと緩んだ空気。
キルアを腕から下ろし、真っ先にクラピカに向き合う。
「…大分無茶をしたね。」
「……A、貴殿はどうして旅団と、」
「話の前に、その念の代償を先に消化しよう。私と3秒目を合わせて…そう、いい子。」
____『
「お眠り、クラピカ。」
ぐら、と目の前の彼がよろけるのを受け止めて、それから念で『円』を張る。
そして、クラピカに意識を集中させながら念を込めた。
____『
「君が苦痛に苛まれる事なく、健やかに眠れますように。」
私がそう唱えた後、じわじわとクラピカの顔に血の気が戻っていく。
普段はこんな穏やかな念を使う事はないので、少しばかり違和感がある。
それでも私の腕の中で眠る彼は、この数日でかなり精神を削り、身を削り旅団と対峙した。
少しの憐れみと惜しみない賞賛を込めて、彼には安らぎを贈ろう。
「……さて、まずはクラピカが起きる前に情報の共有をしたいんだけれども。」
この飛行船に乗っているのは、寝息を立てるクラピカ、そして携帯のメモに情報があったレオリオ、さっきからジッとこちらを観察している見覚えのない人物。
それからゴンと……何やらツンとそっぽを向いているキルアだ。
「キルア、何に不貞腐れてるの。」
「…しらね。」
ぷい、と子どもらしく私に背を向けたキルア。
忠告の甲斐なく旅団と敵対している彼に、怒りたいのはこちらも同じである。
ため息を一つ吐いた時、何やらしたり顔のゴンが近づいてきて、ひそひそと内緒話をした。
____多分、旅団のアジトで『どうでもいい』って言われたのが嫌だったんだよ!
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ゆーな(プロフ) - キルアの甘えたな所とヒソカが何だかんだ優しくて可愛い過ぎる!このお話面白くてハマりました! (2022年1月15日 15時) (レス) id: 83b0960623 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:甘夏蜜柑 | 作成日時:2021年10月2日 2時