十七柱 ページ17
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「政府からの振込金と審神者様の奨学金とが相殺された残りの金額が入っております」
「えっ、奨学金返済済みなの?これだけあるのに?」
「はい。…ここだけの話、死人や重症を負わせた本丸へ行かれる際には前任の人数に応じて手当が付くのです」
…なるほど、死んだら自業自得だという政府からの手切れ金か。
それとも、金をくれてやったところで使い切る前に刀剣男士の手で死ぬだろうという余裕か。
少し高揚しかけた気分が下がる。
表情が乏しい私のそんな気分の上げ下げをもちろん知る由もなく、淡々とこんのすけは説明する。
「他にも、審神者様自身の霊力の強さによっても手当がつきます。本丸自体の評価にもよってお給金の額が異なります」
「至れり尽くせり…でも結局Sanizonで金を落とすなら政府に大きな金銭的打撃はないんだろうね」
「そうでございますね。ですが流石に私めもここまでの金額は見たことがありません…」
どうやら、ブラック本丸と認定されると一人や二人は新しい審神者を送るらしい。
それらが殺されたり、重傷を負わせることが続くと本来なら本丸自体が取り潰しになるのだとか。
しかし、この本丸は例を見ない善良な本丸であった過去があり、功績が多いために残されていたらしい。
「ですが、次はもう無いようです」
「…ああ、こちらに来る前に柏木さんが何か言ってたね。たしか“とうかい”だったかな」
「はい。刀を解すと書いて刀解と読みます。政府は、もし貴女様という5人めの審神者がいなくなった瞬間に全刀剣男士を刀解するつもりなのでしょう」
「…そう」
…ああ、思ったよりも政府自体の雲行きも怪しいなあ。
どうせならば、思い切ったことをしてしまおうか。
「うん、そうしてしまおう」
私はひとりでに頷いて、テーブルの脇に置いておいたスマホを手に取った。
電源のボタンを長押しして、完全に電源を落とす。
「…審神者、様?」
呆然とした問いには答えず、真っ黒な画面しか映さなくなった携帯を引き出しに仕舞う。
きっちりそれを閉めて、今度はデスクトップの方のパソコンの後ろを上から覗き込む。
そして、躊躇いなく繋がっていた線を全て引っこ抜く。
悲鳴の様な声が聞こえたが、構わずやってやった。
「よし」
コクリ、と自分の行動に満足して一つ頷いた。
そのとき、隣で顔を引きつらせていたこんのすけがぷるぷると震えながら口を開いた。
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作者名:甘夏蜜柑 | 作成日時:2019年4月10日 21時