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十二柱 ページ12




3人目は男性の審神者で、にこにこと朗らかな笑みを浮かべながら、ボロボロに傷ついた刀剣男士様方を真っ先に手当てしたそうだ。

2人目が酷い人間だっただけだ、人間だって悪いものしかいないわけじゃない…と彼らも心に傷を抱えながらも新しい審神者を迎えたのだとか。

しばらくは穏やかな日々が続いたそうだ。

しかし、これならば…と、安堵したこんのすけが目を離した隙に、


「3人目の審神者は、言霊を使って刀剣男士同士の真剣による勝負を強制したのです」


はあ、と自然い漏れ出るため息。

わかってはいたが、問いかける。


「……それは訓練、とかっていう意味じゃないよね」

「…先ほどもお話ししましたが、刀剣男士の刀は彼ら自身。刀身が傷つけば血を流し、折れれば死にます…だというのに、文字通り自分を使って切り合わせたのです」


それを訓練とでも言えますか?と言外に問われた様な気がして、少し虫の居所が悪くなる。

そして、とこんのすけはそんな私につぶらな瞳を向ける。

つられる様に、動かしていた手を止めて視線を返した。


「…とても仲の良いご兄弟の刀剣男士が涙ながらに斬り合うのを見て、いい余興だと…!」

「悪趣味」


バッサリと切り捨てれば、こんのすけはいくらか安堵した様な表情を浮かべ、何度も頷く。


「ええ、ええ!ほんとうに…!」

「それで、その審神者は死んだの?」

「はい。刀剣男士が仲間を守るために…」


刀剣男士様が殺せたのか、と問えば寝首を掻いたと返ってくる。

2人目に審神者はずる賢く自分の部屋に結界を張っていたが、3人目は張っておらず殺すことができたのだとか。

それでも、やはり何口か刀剣が破壊されてしまった後だったらしい。


「4人目も、だめだったの?」

「…はい」

「…政府の目は節穴なんだね」


ため息を一つ吐いて、畳を拭き始める。

棚などとは違い、水拭きは水拭きでもしっかりと固く絞らなくてはならない。

ずっと動きっぱなしだからか、パキリと背骨が音を立てた。


「4人目の審神者は、一際酷い人でした…」


こんのすけの鬱々とした声を聴きながら、黙々と手を動かし続ける。

いつのまにか手元が見えなくなっていて、外が暗くなったことに気がついた。


「…それを聞く前に、明かりをつけよう。大分、暗くなってしまったからね」


真っ黒になった雑巾を桶に投げて立ち上がった私に、彼はコクリと頷いた。

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作者名:甘夏蜜柑 | 作成日時:2019年4月10日 21時

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