検索窓
今日:5 hit、昨日:56 hit、合計:918,711 hit

23 ページ23




大きく隔たれたこの壁は、先ほどセメントス先生が作ったものだ。

見事に内側にいる私に気づかず、作ってしまった。


「え、ええっ、あのAさん!これは、あの、えっと…」


1人動揺する緑谷くんに、仰向けのままひらひらと手を振った。

萎んだオールマイトが、セメントス先生にお礼を言っているのが聞こえた。


「セメントス、緑谷少年を先に運んで行ってもらえないだろうか」

「え、あの、僕より、Aさんが…!」

「い、ーよ、緑谷くん。私、先生と話す、から…」


後ろ髪を引かれるようにして運ばれて行った緑谷くん。

それを見送れば、いつのまにかオールマイトが頭の横に座っていた。


「やはり、気づいていたんだね…A少女」

「はろー、八木センセ…げほっ」


なるべく軽くなるように言ったが、彼の眉が下がる。

それとともに、重い沈黙が舞い降りてしまった。


「……ぃ、」


ぽた、ぽた、と頰に落ちるぬるい水。

なんだ、と思って見上げれば、思わず口を開けて固まってしまった。


「っすまない、キミを守れなかった…A少女ッ」


ボロボロと涙を零して、泣いていたのだ…『平和の象徴』が。

先ほどまであんなに怖い顔をして拳を振るっていた彼が、涙を流している。

たった1人、傷つくことを阻止できなかったからと。

あんなに多くの命を救っていながらも、私1人の傷に、涙を流してくれているのだ。


「ま、もれてるじゃん、オール、マイト」

「…いや、私は…っ」

「私、死んでな、いし…」


思い手をゆっくり持ち上げて、彼の痩せこけた頰に当てる。

そして、一言一句、伝わるようにと声に出した。


「…守って、くれて…ありがと、オールマイト」


出来る精一杯に口角を上げて笑う。

そうすれば、降ってくる雨の量が余計に多くなってしまった。


「な、かないで…ください、よ…もー」

「A少女…ッキミはなんて優しいんだ…ッゴフ…っ」

「先生も…バカが、つくほど…優しい、ですよ…」


彼の涙が出てこなくなった時、フッと力が抜ける。

その様子を一目見てわかったであろう彼は慌てて声を上げた。


「A少女、眠いのか…!?」

「…そ、ですね…瞼…重い」

「待ってくれ、そ、それは寝てもいいやつか?大丈夫なのか!?」


オロオロとこちらを覗き込む先生に向けて笑った。

大丈夫、と言おうとしたが、声に出ていたかどうかはわからない。

24→←22



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (374 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
967人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

びだくおん - 25のところ相澤先生のセリフ『礼』が『例』になっていると思いますよ〜 (2018年9月26日 20時) (レス) id: 928f36eedf (このIDを非表示/違反報告)
裕貴雛@きょーたん(プロフ) - 突然すみません。こいつ何言ってんだと思うかもしれませんが書きます。replaceという単語が書き換えるという意味でで出てきてるのですがreplaceの方が一般的に置き換えるの意味の方が強いです。また、exchangeは商品やお金に対して使うのでchangeをオススメします。 (2018年7月11日 4時) (レス) id: 630a80e8a5 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - すっごく面白いです!!!!これから少しずつわかってくるであろう真実にドキドキします!誰落ちかも楽しみです〜!更新楽しみにしてます! (2018年6月28日 22時) (レス) id: be8945b53e (このIDを非表示/違反報告)
ユニ(プロフ) - 紹介文の漢字が英雄になっています!間違ってたらすみません。 (2018年6月24日 18時) (レス) id: dff716be10 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:甘夏蜜柑 | 作成日時:2018年6月21日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。