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大きく隔たれたこの壁は、先ほどセメントス先生が作ったものだ。
見事に内側にいる私に気づかず、作ってしまった。
「え、ええっ、あのAさん!これは、あの、えっと…」
1人動揺する緑谷くんに、仰向けのままひらひらと手を振った。
萎んだオールマイトが、セメントス先生にお礼を言っているのが聞こえた。
「セメントス、緑谷少年を先に運んで行ってもらえないだろうか」
「え、あの、僕より、Aさんが…!」
「い、ーよ、緑谷くん。私、先生と話す、から…」
後ろ髪を引かれるようにして運ばれて行った緑谷くん。
それを見送れば、いつのまにかオールマイトが頭の横に座っていた。
「やはり、気づいていたんだね…A少女」
「はろー、八木センセ…げほっ」
なるべく軽くなるように言ったが、彼の眉が下がる。
それとともに、重い沈黙が舞い降りてしまった。
「……ぃ、」
ぽた、ぽた、と頰に落ちるぬるい水。
なんだ、と思って見上げれば、思わず口を開けて固まってしまった。
「っすまない、キミを守れなかった…A少女ッ」
ボロボロと涙を零して、泣いていたのだ…『平和の象徴』が。
先ほどまであんなに怖い顔をして拳を振るっていた彼が、涙を流している。
たった1人、傷つくことを阻止できなかったからと。
あんなに多くの命を救っていながらも、私1人の傷に、涙を流してくれているのだ。
「ま、もれてるじゃん、オール、マイト」
「…いや、私は…っ」
「私、死んでな、いし…」
思い手をゆっくり持ち上げて、彼の痩せこけた頰に当てる。
そして、一言一句、伝わるようにと声に出した。
「…守って、くれて…ありがと、オールマイト」
出来る精一杯に口角を上げて笑う。
そうすれば、降ってくる雨の量が余計に多くなってしまった。
「な、かないで…ください、よ…もー」
「A少女…ッキミはなんて優しいんだ…ッゴフ…っ」
「先生も…バカが、つくほど…優しい、ですよ…」
彼の涙が出てこなくなった時、フッと力が抜ける。
その様子を一目見てわかったであろう彼は慌てて声を上げた。
「A少女、眠いのか…!?」
「…そ、ですね…瞼…重い」
「待ってくれ、そ、それは寝てもいいやつか?大丈夫なのか!?」
オロオロとこちらを覗き込む先生に向けて笑った。
大丈夫、と言おうとしたが、声に出ていたかどうかはわからない。
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びだくおん - 25のところ相澤先生のセリフ『礼』が『例』になっていると思いますよ〜 (2018年9月26日 20時) (レス) id: 928f36eedf (このIDを非表示/違反報告)
裕貴雛@きょーたん(プロフ) - 突然すみません。こいつ何言ってんだと思うかもしれませんが書きます。replaceという単語が書き換えるという意味でで出てきてるのですがreplaceの方が一般的に置き換えるの意味の方が強いです。また、exchangeは商品やお金に対して使うのでchangeをオススメします。 (2018年7月11日 4時) (レス) id: 630a80e8a5 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - すっごく面白いです!!!!これから少しずつわかってくるであろう真実にドキドキします!誰落ちかも楽しみです〜!更新楽しみにしてます! (2018年6月28日 22時) (レス) id: be8945b53e (このIDを非表示/違反報告)
ユニ(プロフ) - 紹介文の漢字が英雄になっています!間違ってたらすみません。 (2018年6月24日 18時) (レス) id: dff716be10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:甘夏蜜柑 | 作成日時:2018年6月21日 2時