どこかの世界線で、何かが始まる前の話。�� ページ3
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あの場所に近いビルのワンフロアを借りた。
そこを少し改装をして、黒と青を基調に纏めたそこまで大きくはないバーを経営する。
今日は、初の開店日である。
店の名前は、『Distress』。
開店日、といっても宣伝なんかは一切しなかった。
そもそも収入は期待していないし、ここはあの場所にすぐ向かえるように借りただけだ。
「…ひま」
くあ、と欠伸がこぼれた。
読んでいた小説にしおりを挟んで、カウンターの引き出しにしまう。
グラスでも磨くかと腰を上げた時、カランカランと来店を告げるベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
サッと愛想笑いを浮かべて、固まった。
見覚えのある、でも記憶の中よりも少し若いその姿。
「お好きな席にどうぞ」
黒い薄い生地の手袋をはめた手で、店内を指した。
この店には基本、カウンター席と窓に沿う様に並ぶ席しかない。
入ってきたお客様第一号は、ニコニコと笑みを浮かべながらカウンター席の一番端へと腰かけた。
黒いベストに白いワイシャツ、青い石のついた洒落たタイ。
褐色の肌と、垂れた人好きする瞳、金色の髪。
バーボンであり、安室 透であり、降谷 零。
胸を押しつぶすように懐古の情が渦巻いた。
それでも、それを気づかれるわけにもいかずなんでもない様に表情を作った。
「何か、飲まれますか？」
「ああ、はい。知り合いがもう少しでくるので…」
「そうですか。ではまたその時にお伺い致しますね」
シンと何も音がないのが、息苦しいような気がして曲をかける。
音量を極力絞ったジャズミュージックだ。
ひとつひとつグラスを丁寧に拭うフリをして、気づかれないように観察する。
…組織に入ったばかりか。
いや、もう幹部になっている可能性も。
じゃあ『知り合い』って、ジン？ライ？それとも…。
カランカラン、と本日二度目の来店を告げる音が店に響く。
視線をゆっくり上げて、息が止まりそうになった。
「おー、待たせちまったなバーボン」
「…遅いですよ、スコッチ」
黒い短髪、手入れを怠ったような無精髭。
優しそうな顔で、柔らかく相好を崩す男が、店に入ってきた。
手が小刻みに震えているのに気づいて、手に持っていたグラスを割らないうちに置いた。
「では注文を、」
「…はい、何にします？」
私は震える息を飲み込んで、それから注文を問いた。
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さち - おもしろいです。続きが早く読みたいです。よろしくお願いします。 (2019年5月22日 0時) (
レス) id: 43b8d3401a (このIDを非表示/違反報告)
Blanche*(プロフ) - 思わず泣いてしまった....... 続きが気になります!! 無理のない範囲で頑張って下さい!!!!!! 応援しております!!!!!! (2019年5月21日 22時) (レス) id: 5327bf9003 (このIDを非表示/違反報告)
ナシ(プロフ) - コメント失礼します！おもしろいし、感動して何度も泣いてしまいました。続き気になります！更新頑張ってください！！ (2019年5月21日 18時) (レス) id: 9c83a487c9 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - めっちゃ面白いです！！ほんとに！！更新楽しみにしてます！ (2019年4月4日 14時) (レス) id: cb719f86c6 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 大好きで何回も何回も読み直してます！！更新待ってます！！ (2018年9月27日 7時) (レス) id: cb719f86c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：甘夏蜜柑
| 作成日時：2018年3月24日 0時
