幼なじみ以上 ページ15
( ―― 2022年1月『花組』Red side )
カーテンの隙間からちらりと見える真っ暗な空にはいく千もの星が輝いていて、電気もつけていないリビングは、その明かりだけで物の形がわかるくらいに今夜の夜空は澄み切っていた。
もうとっくに終わったクリスマス。年も明けて、例年通りなら慌ただしい年始だけど、今年は何日かの休みがあったからAちゃんの家に集まろうってことになった。今日はそれぞれに用事があったから終わった順に合鍵で集合ということで。
幼馴染だとしても合鍵は重すぎる。俺だって帆乃とか翔太の合鍵は要らないし、俺も作らせたくない。ただ、あの子だけは、そうでもしないとフラっと消えてなくなりそうで、そんな苦肉の策が鍵だっただけ。それだけ。
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鍋パーティでもしようかって話になったけど、帆乃がハンバーグを食べたいと言い出したので、洋食に変更。小さな手で手際よく野菜を切るAちゃんの手はちゃんと大人の手をしていて、ペンだこがちらっと見えたのは彼女の努力の結晶なのだろう。
これ以上傷を増やして欲しくない俺は、石に灸だと分かっているけど極力彼女を火の元から遠ざけた。そんな俺の意図を汲み取っているのか否か、当の本人は「プリンだけ作りたい」と片っぽのコンロを占領して鼻歌を歌っていた。
「涼太くんタネできたよ」
「ありがとう、焼いちゃうね」
「うん、ありがとう」
ちょっと小ぶりのハンバーグの実をフライパンに敷き詰めて、程よくあったまっていた油がジュウ……と気持ちの良い音を奏でる。
大葉、卵、ハッシュドポテト、チーズ、トマト。
飽きないように変わり種を沢山。俺だったら二種類くらいしか作らないけど、苦労を惜しまずボキャブラリーの豊富さにこだわるところはAちゃんらしいと思う。食べてもらう人のことをとことん考えつめた手料理ほど美味しいものはない。
「最近はちゃんと食べてるの？ 」
「んー？食べてるよ」
きっと嘘。
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作者名：風呂 | 作成日時：2023年1月29日 15時
