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「副長!」
Aの呟きに合わせたかのように、隊士が牢獄に転がり込んで来た。
外の方向を指差し、蒼ざめている。
「屯所に見廻組が来てます!」
「なんだと!?」
外へ飛び出すと、屯所の入り口から言い争う声が聞こえる。
門の下で黒と白の塊が入り乱れて、混乱が起きていた。
「根路銘Aを保護せよとの命に従って、エリートが責任を持ってAさんをお迎えに参りました。通して頂けますか」
佐々木がやる気のない敬礼をしながら、黒い服を着た隊士を見下ろしていた。
「保護してどうするつもりだ」
一歩も行かせまいと、佐々木の前に立ち塞がった。
自分の背後には、Aがいる牢獄がある。
「彼女を見廻組の一員として歓迎することになりましてね」
と言う佐々木は、微塵も顔を動かさない。冗談を言っている風には見えなかった。
「お前らエリートは頭がおかしいのか?奴は殺人を犯してるんだぞ?」
「貴方こそ勘違いしていらっしゃる。彼女は無実の罪で“真選組に投獄されてる”善良な市民です」
胸ぐらを掴もうと伸ばした腕を、近くにいた部下達に抑え込まれる。
「彼女には、残念ながら身寄りがありません。だから、ウチが保護して差し上げると言っているんです」
大きく蝶番がきしむ音に振り返ると、蔵の両扉が開いた。
「……A?」
白い制服を着た男達に両脇を挟まれ、顔を伏せたままのAがいた。
小さく縮こまり、大きく見開いた目が、恐怖に震えている。
「では、これで」
「待ちやがれ!!!」
部下の制止を振り切り、佐々木の肩を鷲掴みにした。
「離しなさい。公務執行妨害で貴方を────」
「クローンなんだろ」
耳元で呟いた言葉に、散々無表情を貫いて来た佐々木が動揺の色を一瞬見せた。
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シヴィル(プロフ) - とっても面白いです!何か理由があって更新できなくなったのかもしれないけど少しずつでいいので進んでみてください。応援しています! (2018年3月27日 16時) (レス) id: 5703f71a40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あーたぁさんだぎぃ | 作成日時:2018年1月19日 21時