12 ページ13
.
「これからどうするんだ」
「これから?」
Aが口に運ぼうとした箸を止め、何かを思索するような素振りを見せる。
元・殺人犯と朝飯を共にするとは、妙に引っ掛かる。
本来ならば牢にぶち込んでおくべき相手だが、無罪となればそれは叶わない。
「取り敢えず煉獄関周辺の情報を集めようかと」
「どうやって」
「決めていません」
ずぃと味噌汁をすすり、心から安堵したような溜息を吐いた。
「美味しいですねぇ」
「幕府は何が目的なんだ?お前をどうしようとしてる」
状況が状況だというのに、呑気で無計画なAに何故かこちらが腹をたててしまう。職業上、そうなのかもしれないが。
「私が煉獄関にいた5年間に、クローン量産施設の建設をしたかったとの噂は耳にしていました。私が戦闘経験を積むことで、完全軍事用クローンの増産とか……多分まだそこまでは進んでいないと思いますが」
「じゃあ、もしそれが完成してお前が幕府の手に渡ったら……」
「バラバラに解剖されて終わり、ですかね」
言葉を詰まらせる俺に、冗談ですよ。とAが続ける。
「クローンの試作品は数多くないので手荒な真似はしないと思います。ですが、煉獄関の存在と私の存在は貴方達の手の届かないところへ葬り去られることは確実でしょう」
それだけはどうしても避けたいんです、と今度は卵焼きをつついた。
Aは、ちらちらと向けられる物珍しそうな隊士達の視線など気にならないのか、朝飯を掻きながら考え事を始めている。
「なァ」
「……はい?」
呼びかけにワンテンポ遅れてAが返事を返した。
「そんなに幕府がお前のことを大事なら、なんで昨日は諦めたんだ?」
「諦めてませんよ。そーゆーフリをしただけです。後日に算段が整い次第、また取り返しに来るか。誘拐を装って拉致、なんて。大丈夫ですよ。救ってくれた貴方達には迷惑かけないようにしますから。あっやっぱり宿場くらいは紹介して」
「全然大丈夫じゃねーだろ」
「ならウチにいればいいじゃねーですか」
俺の朝飯が乗ったトレーの横に、新しいトレーが置かれる。
呆気にとられる俺を華奢な青年が丸い目で見下ろしていた。
「ウチが保護すればいいじゃねーですかって言ったんでィ。耳悪いんですか土方コノヤロー」
6人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シヴィル(プロフ) - とっても面白いです!何か理由があって更新できなくなったのかもしれないけど少しずつでいいので進んでみてください。応援しています! (2018年3月27日 16時) (レス) id: 5703f71a40 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あーたぁさんだぎぃ | 作成日時:2018年1月19日 21時