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肆 加筆 ページ5

『・・・へくちっ』

気を遣わせたのか、部屋に一人残されてから数分

朝日と一緒に流れ込む空気は異邦人がただ立ち尽くすことを許さなかった

つい先程までお世話になっていた布団に潜り込んで暖をもらう

どんな状況でも温もりは安心を与えてしまうものらしい

ターミナルに釘付けになった視界を他にまわす余裕ができて、気付いた。
布団のためか端に寄った机の上、きちんと畳んで置かれたズボン

『寒そうに見えたかな。…親切な人ばっか』

屯所らしいから少し抵抗はあるけど、周囲確認、ご厚意に甘えるとしよう

この寒いのにいつまでもショートパンツじゃ凍えちゃうもんね


着替えを終えて、縁側で大きく深呼吸を三回、もう一回

さっきは喧嘩しかけた空気も薄着をやめれば気持ちよく体を通り過ぎていく

朝特有の動き出すバイクやトラックのエンジン音。飛び立つ鳥の羽音。
ここだけ切り取れば東京と変わらないのかもなぁ

早くいつもの日常にと願わなくもないけど、それほど大きな心配事を残してきたわけでもないから

『うん、なんとかなる!なんとかなれ!!』

前を向いて決意表明

ザク、と砂利を踏む音で左に顔が向く

『あ、終にい…こんにちは!』

しまった、私が話さなきゃ、と思った勢いでまた名前を呼んでしまった

いやよく考えたら江戸の町にいれば真選組幹部の名前くらい知っててもおかしくないか…?
監察方はともかく隊長クラスの活躍なら噂になったことくらいあるでしょ多分!

戸惑うか迷うかのようにふらふらと泳ぐ瞳

自分以上に緊張している人を見るとなぜか落ち着いちゃう、アレは今でも健在で

『こんにちは。少しだけお邪魔しています…斉藤終さん?』

返事がないのは分かっているのに疑問形を投げてしまう

誰の目にも分かりやすく困らせたみたい

あれ、でも、そうか、当然だ

『はい、大丈夫ですよ。斉藤さん。座っていきますか?』

縁側に座って足を揺らして見せると、それに倣って彼も隣に腰掛ける

うん、腹痛が起こるほどの緊張はしてないみたい!!まずはこれでよし!

それから反省!起きたら二次元キャラにって?とんでもない。

無言でいる間の、漫画では描写できないほどほんの小さな口元の動きにも

誰かが話せば少しの表情も見逃すまいと伸ばす視線にも

いつか見た万事屋への依頼書に書かれた葛藤が表れているようで。



彼らは今この江戸で生きている。非現実と現実が入り混じるのは勝手でも、

自分が例外になれないことくらい分かっていた。

伍 加筆→←参



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作者名:麻外谷 | 作成日時:2018年1月22日 23時

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