12年前の元彼は私を見てくれない【松野千冬】

episode35 ページ36

「タイムリープって信じるか？」


「、、、は？」


想定外の言葉に思わず私の口から呆気に取られたような変な声が漏れる



タイムリープ？


大事な話ってそれ？


武道はふざけてるのだろうか


でも武道の表情からしてふざけてる様には見えない
逆に真剣な顔をしている


「タイムリープ？どうしたの？急にそんな事言って」

私は半笑いしながら武道にそう聞き返すと
武道は目を伏せながら静かに口を開く


「もし俺が12年後の未来から来たって言ったら信じるか？」


「、、！」



12年後という言葉に私の脈がどくんと跳ねる


今から12年後私は殺された


あれは現実で今この世界は夢の中の筈だ


そう、これは夢だ



なかなか覚めない長い夢



「じゃあさ、12年後武道は何してたの？」

私は確かめるように武道に尋ねた

私は12年後を知ってる
おふざけならすぐ分かる


確か12年後武道は東卍の幹部だったはず
直接会うことはあまり無かったけど
お兄ちゃんが前そう言っていたのを覚えている


武道は腐ってしまった、と


色んな犯罪に手を染め、人も殺したって


こんな最悪な未来、武道が知ってる筈ない
そもそも想像出来ないだろう


きっと武道は私を騙そうとしてる



騙して私を「冗談だよ、馬鹿だな」ってからかうに決まってる



でも武道の答えは私の予想していた物とは全く違うものだった



「東卍の幹部だった」


「、、！」


私は思わず目を大きく見開く



何、で、、


「じゃあさ、私は何してたか分かる？」



「陸人君に聞いた話では本屋」


「、、じゃあお兄ちゃんは」


「元東卍のメンバーだったけど辞めた、その後は知らない」


何で分かるの、、？


デタラメにしては正確すぎる


じゃあ武道は本当に、、、


って事は私は、、



「千冬は、、、」


すると自然と私の口から「千冬」が出てくる


武道は一瞬驚いた様子だったけど答えてくれた



「千冬は殺された。俺の目の前で」



ーーー「あぁ、武道もその場に居たらしいんだが、、」

「、、！ 武道が、、？」


「あぁ、武道は今逃亡中、行方不明だ」ーーー



ふとあの日兄ちゃんが言っていた事が頭の中を過ぎる


武道は千冬が死んだことも知っていた


私は今起きてるこの状況に混乱していると
武道が私に近寄ってくる




「Aもタイムリープしてるんじゃないか？」


武道のそのひと言に私は何も言えなくなってしまった

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