この恋、出会いは覚えておりません (ページ10)

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「何食いたいー？」

はい、今の状況を説明しましょう。
彼の車の助手席に乗って、私の家に向かっています。
運転する姿もカッコイイんですね……ってそんなこと思ってる場合じゃない。

「あの、すみません、やっぱり……」

「だーかーらー、敬語！」

「いや、でも……」

「あ、次の信号どっち？」

「え？あぁ、そこを右に……」

「了解」

いや、右にじゃない！！
何をナチュラルに答えちゃってんの、私！！
このままじゃ本当に家まで行って、ランチに連れて行かれるじゃん！！
イケメンで有名なこの人と！？
昨日のことがあったのに！？
絶対無理！！！！！

そんな私の葛藤も空しく、あっという間にマンションの前まで来てしまった。
車で約５分。
信号があってそれ。
随分近いんですね。

「ここ、です……」

「へー、うちから近い。いいとこ住んでんじゃん」

いや、あなたに言われたくないわ。
ついさっきまでいたあなたのマンションは、うちとは比べ物にならないくらい外観も立派だったし、
部屋も広くて綺麗だったよ。

まぁそんなことが言える訳もなく、近くのパーキングに車を止めて、並んでマンションへ入る。
ってか芸能人がこんな簡単に一般人のマンションに来ていいのか？
帽子とサングラスしてるとはいえ、周りとか気にしないの？
私の心配など一切知らない彼は、平然とした様子でエレベーターへ乗り込んだ。