この恋、出会いは覚えておりません (ページ12)

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「お待たせしました」

「あ、おかえり」

「気になるのあります？」

「うん、俺の見たかったやつが結構ある」

これと、これとー、ってDVDを指差していく。

「でも特にこれ！すっげー見たかったんだよ！」

そう言って、彼は１本のDVDを手に取ってパッケージを眺める。
裏面の説明を食い入るように見つめる目は、キラキラって効果音がするみたいで。
新しいおもちゃを見つけた子供みたいで、なんか可愛い。

「……これから見ますか？」

「え？」

その一言に、彼は驚いた表情で私の方へ顔を向ける。

「すごく見たそうだから」

「いや、見たいけど……でも飯は？」

「簡単なのでよかったら作ります。材料あるし」

「え……いいの？」

「もしよかったら、ですけど」

「見る！食う！！」

満面の笑みを浮かべる彼に、また胸がドキッと音を立てる。

「じゃあ用意するんで、ちょっと待っててください」

「ありがとう」

嬉しそうに棚に視線を戻した彼を背に、私はキッチンへ移動した。
大急ぎで料理を作って、テーブルに並べて。
そっとリビングを覗くと、彼は棚からDVDを何本か取り出して裏面の説明を眺めている。
邪魔しちゃ悪いかな、なんて思いながらそっと声をかけた。

「……あの」

「ん？」

「ご飯、出来ましたけど……」

「食う」

テーブルの料理を見て、彼は

「美味そう」

と笑ってくれた。