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「すみません、狐の好物は知らなくて」
「うん、僕も狐の好物なんて知らないな」
狐本人――と言って正しいのかは謎だが――も好物を知らないらしい。一般的にはキツネと言われているが、実際のところはどうなのだろうか
「うん、どうしたのだ。突然立ち上がって」
「ちょっと待っててください。キツネ持ってきますから」
「へっ、ちょっと待って。狐なんて連れてこないでよ」
「いやいや、連れてきませんよ。キツネっていうのは油揚げのことです」
時折出てくる口調で冷静に質問されたので、キツネを取ってくると言ったのだがそのとたんに慌てて机の下に隠れてしまった。どうやら狐と勘違いしたらしい。
「あの、狐怖いんですか?」
「そうだけど……それがどうしたのさ」
「どうもしないんですけど、妖狐でも狐が怖いってあるんですね」
「うむ、昔いろいろあったから――」
キツネを取ってきていまだに机の下にいる妖狐に尋ねたところ、本当に狐が怖いらしい。ふーん、と興味のなさそうな返事を返し、食事に戻った。
数分経って、妖狐が何気なく口を開いた
「ねぇ、君のなかで僕って妖狐で定着してない?」
「そうですけど……それがどうかしました?」
「あの……きちんと名前で読んでくれないかな。さっき言った昔のことと関係あるんだけど――」
「はぁ、そうですか。わかりましたよ、白天くん」
なぜ妖狐で定着しているのがバレたのか。やっぱり心を読んでいるのではないか。こんなことを考えながら夕飯を終え、用意を始めた。
白天は仕事が早かった。私が引っ張り出して散らかした洋服やら上着やらを器用にたたみ、櫛やヘアピンをまとめてトランクに入れ、さらには元から散らかっている部屋を整理整頓された空間に変えてしまった。本当に万能な奴だと思う。
ここでひとつ、聞き忘れていたことを訊いておく事にした。
「ねぇ、サーキュリーとリンドって何なの?」
「うん、説明してなかったね。忘れてたよ。サーキュリーが人間でリンドが魔術師。人間界で人間は――とか言ってたら怪しまれるからね。それを回避するために作られたものだよ」
またいろいろと考えられたものだ。サーキュリーが人間でリンドが魔術師――きっとその他の種族にも呼び方があるのだろう。それをこれから覚えなければならないのだろうか。
「因みに妖精はヒメリ。回避するためとはいえこの辺の言葉は適当に作られてるからね。特に由来なんてないよ」
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作者名:天川凛廻 | 作成日時:2017年12月24日 20時