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あれ、と今更ながら周囲を見回す。白天はどこへ行ったのだろうか。小さくて見えていないだけかもしれない、と呼んでみるも、返事はない。不思議そうにこちらを見る神無月に、白天を見ていないかと訊くと、ああ、と言って笑う。ついさっき、聖水の間へと飛んでいったらしい。相変わらず自由だな、と呆れながらに安堵する。
彼はどう思うだろうか。ふとそんな疑問が頭をよぎり、ねぇ、と神無月の方を向き直る。

「神無月と色水の円盤って、なんか似てるね」

「そう……かな。わからないな」表情は変わらないままで。

うーん、と考え込む彼を見て、つい笑ってしまう。神無月は髪を揺らして口を小さくへの字に曲げたかと思えば、ふぅっと息をついて笑った。
ステンドグラスの柄を見たり、色水の種類を数えたりするうちに、双子の滝の方から、時間だよ、と白天と桃音が飛んできた。忘れていたが、パーティーという名の謎の行事があるのだった。
別に行かなくてもバレないのでは、とつい漏らす。白天がそれを聞き逃すはずもなく、いやいや、特に君たちはバレるし、今年ばかりは駄目だからとため息をついた。じゃあ来年からはサボろう、と今度は心のなかで決意した。

迷路を抜けて、当然のようにきらびやかな空間につい目を閉じる。寮のテーブルの端に並んで座り、半分だけで校長の祝辞を聞く。料理もそんなに口にせずに、ほぼ常備に近い本を開く。隣の神無月はというと、白紙に学校規定ではない羽ペンを走らせている。それを見てつい、小さく声をあげる。顔をあげてこちらを向いた彼に問いかける。

「神無月って、左利き……だったの?」

「左利き、というか、両利き、かな」

右側に座っていて気がつかなかったが、腕が全く当たらなかったのはそれかと納得する。
数秒間その手元を見て、本に視線を戻した。
ざわめきのなかで本を読み続けて1時間30分、頭上から声が降ってきた。誰に用事だろうかと流していると、その声はもう一度降ってきた。

「おいってば。お前ら?ホノムじいちゃんがすぐに寮決め出来なかったの」

「え、あ、えっと――」

「はい。そう、ですが、どなた、ですか?」

突然の問いかけに戸惑う私に、神無月は笑ってから答えた。ついでに名前まで聞き出すとは仕事が早い。あぁ、と言って紫バッジの彼は笑った。

「俺、暁。暁優夜(ゆうや)。土寮3年。で、お前ら名前何だっけ」

「僕は、神無月で、こちらは、水月。えーと……何と、呼べば?」

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作者名:天川凛廻 | 作成日時:2017年12月24日 20時

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