今までも、これからも。〜yb*in*hk〜

勝手に進む時間の中で。 ページ46

Kota side.



ただ声をかけただけなんだけど。
･･･俯いてしまった慧。




「･･･俺は光みたいに、慧のことは気付いてやれない」



それでもあの頃から、少しずつ、少しずつ、
俺に教えてくれてたじゃないか。



あの時みたいに。
ゆっくり抱き締めてみる。



「慧のこと、俺に教えてって、言っただろ･･･？」




いつだって、時間は勝手に進んでいく。
･･･それなら。



「我慢しなくていいって、
隠さなくていいって言ったろ」



今を大事にするしかないじゃないか。



「･･･我慢、は、してない、けど、ね･･･」



ゆっくり体を離した慧は、
やっと、話し始めてくれた。



「俺だけ、進めなくて、変われなくて･･･
大人になれないんじゃ、ないかって」




俺も口にすることはなかったけど、
慧は初めから子どもではなかったと思う。


ろくに子どもでいることを許されず、
光を守るために生き、
光のために自分を守っていた。



「光の料理が、どんどん美味しくなって、
俺が気付かないうちに、部屋が綺麗になってたり、
俺が眠れるように気遣って優しくしてくれる。
･･･それに、俺は10年前の宏太みたいに、
でっかくないなって、思って･･･」



時間は勝手に進む。
なりたくなくても大人になる。



･･･だから、もう少し子どもでいて欲しいんだ。




「まだ行くなよ、まだ大人になんなくていい。
･･･ていうか、もう少し子どもらしく甘えてほしいんですけど」




見届けるって言ったんだ。
そんなに急がないでくれよ。




「･･･家族、だから？」



見守っていたはずの弟は、
いつの間にか大人になろうともがいていた。



「勝手に大人になろうとすんな、馬鹿」



お前らに温かさを、
家族を教えたのは俺だと、
少しだけの傲慢を許してほしい。



家族に、終わりなんてないんだから。

だって、そこに君がいたから。→←その問題、俺の問題。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す