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アズール先輩が来てくれていなかったら、どうなっていたことか。想像もつかない。
それに、ひっかかる言葉がある。フロイド先輩が私を好きだと言ったことだ。
あれはいつもの気まぐれではなく、本気であった。冗談ではなく、真剣な目を私に向けていた。
希望を抱くが、まさかと思い気にはとめなかった。
一番驚いたのは先輩が私の性別を知っていたことだ。誰にも言っていないし、着替えも見られていないはずだ。おかしい。
だが先輩のことだ。反省していたし、言いふらすことも無いだろうと考えシャワーを浴びることにした。
シャワーを浴び終わり、寝る支度をする。一人部屋とはなんと素晴らしいものか、と実感する。
ベッドに入り、眠りにつこうと目を閉じた。
だが、一向に眠気は襲ってこない。むしろ目が冴えてしまった。時計を見るとベッドに入ってからもう30分もたっている。
このままでは寝付けないと思い、制服に着替え寮の外へ出る。夜の外は心地が良い。
冷たく、火照った体を冷ますのにちょうどいい。
水に反射し、夜空が一層きれいに見える。
ずっとここに居ても飽きないような景色である。
「ねぇ、風邪引くよ。」
その声は思ってもいない人のものだった。まさにフロイド先輩であった。放課後であんな事があった手前、後ろを振り向けず無視のような形になってしまう。
「人間って寒さに弱いんでしょ?早く帰りなよ。」
気にせず先輩が近づいてくる気配がする。一度無視をしてしまったため、今さら返事なんてできない。そんな謎のプレッシャーから口を開けずにいる。
「…稚魚ちゃん。ホントにごめんね…。」
後ろからブランケットを肩にかけてくれる。そんなに優しくされれば勘違いしてしまう。期待してしまう。この気持ちが分からず、それを紛らわすように私は深くうつむく。
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作者名:りん | 作成日時:2021年7月25日 16時