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「降ってきたね」

「うん…」


ぽつぽつと模様を作っていた雨はすっかり本降りになっていた。
聞こえる雨音が激しくなって、その強さを伝えている。

秀一は、公園からここまで、何も聞かずに手を引いて帰ってきてくれた。
濡れてしまった服で部屋にあがるのを躊躇っていると、タオルと着替えを持たされてお風呂場へ押し込まれた。

シャワーを浴びて着替えて、色濃く残るキズを見つめる。
こんなの見られたら、どう思われるんだろう。軽蔑するかな。
秀一の部屋に行けば俺も入ってくるとお風呂に向かったので、豆電球だけが点いた空間に一人腰を下ろす。
数分で戻ってきた彼が窓を見つめて、雨の様子を伝えてくれた。

どちらも話さないから雨音だけが部屋に響く。




暫くして、秀一が口を開いた。


「俺眠くなってきたんだけど」


真っ直ぐに此方を見る、その目に眠気なんて微塵も感じなかったけど、おいでと言うようにポンポンと秀一の隣を叩かれたから素直に従った。


「Aは眠くない?」

「ん、ちょっとだけ」

「そっか」


じゃあ眠くなるまで話してあげる、なんて言って。
そっと伸びてきた手が頬に触れる。


「冷やさなくて大丈夫?」

「だいじょーぶ…」


ほんとに?と覗き込んだ目が揺らんでいた。
逸らせなくて、ただただ見つめ合う。
憂慮を孕んだ瞳に覚えたのは熱情だったのかもしれない。

ただどうしようもなく縋り付いて求めたくなった。何がしたいとか、そういうのじゃなくて、秀一が今ここに居て温かさをくれるのなら何だってよかった。

不安だったのかもしれない。
頬に触れた手が、もし腕の痣に気づいたら?もし擦りすぎた体の傷に気づいたら?
離れていってしまうかもしれない、秀一は。

交わった目は逸らせなかった。
代わりに滲んできた涙だけが壁を作ってくれた。
不安と縋り付きたいもどかしさと、少しの恐怖。溢れ出しそうになった涙を隠そうと腕を上げれば、その手をそっと引き寄せられて抱き締められた。

何も言わずに。

背中を摩られて、堪えきれなかった嗚咽が漏れる。まるで大丈夫だとでも言うようにリズム良く撫でてくれた。









「寝よっか」


涙も止まった頃、一言だけそう言って、一緒に横になった私に布団を掛けてくれた。
触れる温もりが心地よくて、まだちょっとだけ震えている手を伸ばして、彼のシャツをきゅっと握りしめて眠りについた春の夜。


このまま明日が来なければいいのにと、願わずにはいられなかった。

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ハル - すごく大好きです!更新も無理せずにゆっくりでいいので、楽しみにしてます! (6月16日 0時) (レス) id: aceffff8a7 (このIDを非表示/違反報告)
なー(プロフ) - 鶴さん» ありがとうございます!更新は遅いですけど読んでいただけると嬉しいです(^o^) (6月12日 13時) (レス) id: 3cdd23f11d (このIDを非表示/違反報告)
- すごくはまってしまいました! 続きも楽しみにしています! (6月4日 22時) (レス) id: c081e3d2cd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なー | 作成日時:2019年6月2日 21時

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