続き ページ6
「大丈夫ですか！？どこか痛みますか？」
そんな私を見て、先生はあたふたとしている。天才医師なのにこんなに動揺してるなんて、大丈夫なのか。
「大丈夫です、ただ自分が情けなくて……。風邪をひいてこんなに迷惑をかけてしまって、」
そんな私の涙を先生は優しく拭いとってくれた。
「A、私は貴女にならいくらでも迷惑をかけられてもいいですし、むしろ、かけてもらいたいのですよ」
「えっ？」
「それに、情けないのは私の方です。彼女の体調不良に気づけないなんて、彼氏として失格ですよ……」
「そんなこと、ありません。私は、」
先生の声には回復させる特別な力があるようで、私は体を起こして先生の大きな手を握って目を見た。そして、言葉を続ける。
「私は、先生が大好きです。彼氏失格なんて、言わないで下さい」
「すみません、貴女に励まされてしまうとは。風邪をひいている貴女を励ますのは私の役目ですのに」
先生は決まりが悪そうに頬をかきながら、苦笑いを溢していた。
「先生、明日はお休みですか？」
「ええ、貴女の看病をします」
「先生、いつも言えないこと、言ってもいいですか？」
「……ん？はい、どうぞ」
「お互いに仕事が忙しくて、中々会えないのは分かってます。けど、やっぱりもっと一緒に居たいし……先生は何だか余裕があって、私に会えなくても寂しくなったりしないのかもしれないですけど「待って待って、」
私の言葉を遮った先生は、何だか少し焦っていて。
「私だって寂しいよ。いつだって君に会いたいし、デートの後は毎回離したくない。隠してるだけで、私は独占欲の塊だよ。君が風邪をひいて辛そうな今だって━━」
先生は私の耳元に口を寄せて、耳が孕みそうな低温ボイスで言葉を落とす。
「君に手を出してしまいそうだ」
先生の言葉に、ぼふっと顔が赤くなったのを感じて、隠すように先生の胸に顔をうずめる。先生の心臓もドキドキと速く鳴っていて、私もさらに恥ずかしくなって。
「先生」
「何だい？」
「いい…ですよ、先生。わたしを、めちゃくちゃにしても」
先生の息を飲む音が聞こえる。
「今まで我慢してきたのに…」
はぁ、とため息をついた先生は、私の背中を優しく抱きしめた。
それからどうなったのかは、また別のお話。
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作者名：袴田 怜 | 作成日時：2018年12月17日 1時
