6月2日 ページ4
また雨が降った。
今度は朝から土砂降りである。
流石に用もなければ外には出ないわけで、人は少ない。
いつもと同じ屋上にまた彼は来ていた。
突然飛び降りたから、と色々言われた。
だが身の上を話すわけにはいかないのだ。
ごめんなさい、と謝れば呆れてため息をついた。
「手前は、雨の降ってる時にしか居られねェのか」
「まぁ、簡単に言ってしまえばそうですね」
言ってしまえば彼のただの憶測だっただろう。
勘はいいのだろうか、少し驚いた。
建物の下を覗き込むように柵に寄りかかる。
勿論車も人も少ないのだが。
彼は屋根の下からは今日は流石に出てこないようだった。
「どうしてここに来たんですか」
「仕事の帰りだ」
朝帰りなのだろうか、それなら夜勤だろう。
なるほど、と勝手な解釈をするも、何か引っかかる。
夜勤といえば工場だ、こんな格好をするだろうか。
屋根の上を跳ねるように移動などできるだろうか。
そういえば彼の名前も知らないではないか。
そう思い、屋根の下へ戻る。
「名前、教えてください」
名前なんか知ってどうするんだ、とでも言いたげな顔を見せる。
教えてくれるまで黙っていても怪訝そうな表情はどうにもならなそうだ。
それに、名前を聞くなら自分から、と言われてもおかしくない。
仕方なく、忘れかけている名前を思い出す。
「私は、A。あなたは」
私が名乗ったので渋々というような感じで口を開く。
「中原中也だ」
なんだかんだ初対面ではあるが、いい人なのではなかろうか。
誰よりも人間らしく見えるのに、どこかが変だ。
この土砂降りの中傘もささずにここへ来る時点でおかしいのだが。
濡れていない段差へ座り込んで空を見上げている彼。
相変わらず空模様は濡れた灰色だ。
雨の砂嵐に痺れを切らしたのか口を開いた。
出てきたのはちょっとした話だった。
知り合いの人の子供と今日は出かける予定だったとか、部下のせいで3徹目だったのに部下は図々しくも帰ったとか、溜息をこぼしながらボロボロと零していた。
本人に言えばいいのに、と思うが怒れない人なのだろうか。
「なぁ、明日は1日雨か」
確認するような問いに二つ返事で返す。
すると立ち上がって、よし、と言えばこちらを向く。
「明日、ちょっと付き合え」
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羽夜(プロフ) - おとーふくんさん» 小説を好きだと言ってくれてありがとうございます。完結するかは分かりませんがゆっくりと続きを書いていこうと思いますので、覚えていましたら応援してくださると嬉しいです。コメントありがとうございました。 (2021年10月8日 2時) (レス) id: 152f9f4ea8 (このIDを非表示/違反報告)
羽夜(プロフ) - おとーふくんさん» 約1年越しに好きと言ってくださってありがとうございます。長く放置してしまいましたがモチベも戻り言葉の数も自分では増えたと思います。返事が遅くなりすみませんでした、放置しておりましたがまた少し頑張ってみようと思います。 (2021年10月8日 2時) (レス) id: 152f9f4ea8 (このIDを非表示/違反報告)
おとーふくん(プロフ) - 今の日本に似てる感じが好きです!!もっと早くにこの作品の存在知りたかった... (2020年7月28日 21時) (レス) id: 2f2d7a1768 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羽夜 | 作成日時:2019年8月5日 17時